【新型コロナ】中国紙が「欧米は反省すべき」 どのツラ下げての社説“本当の狙い”

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中国共産党の焦り

 中国外務省が必死で打ち消す様子が印象的だが、理由は簡単だ。石平氏は、中国国内でも水面下で、習近平国家主席(66)や中国共産党に対する疑問の声は、相当なものがあると言う。

「多くの中国人が『新型コロナの感染拡大は習政権の不手際ではないか』、『中国共産党は情報を隠蔽しているのではないか』と今でも疑っています。これに危機感を抱く共産党は、感染の中心地が欧米に移ったことを『党の名誉を挽回する最高のチャンス』と判断したことが、環球時報の社説から読み取れます。社説が主張したいのは、『国家的危機に民主主義は弊害が多い』と『一党独裁の中国共産党が指導したからこそ、新型コロナは押さえ込めた』という2点に要約されるでしょう」

 社説が暴論であることは論を俟たない。石平氏は中国世論がどう受け止めるかを、「レベルの低い愛国者は溜飲を下げるのでしょう。しかし知識人は『また馬鹿なことを書いている』と冷笑しているはずです」と分析する。

 自国民に見透かされる恐れがあっても社説の掲載に踏み切ったのは、それだけ中国共産党が危機意識を持っていることを示している。

「中国は共産党の一党独裁だからこそ、初動で致命的なミスを犯し、世界中に新型コロナを蔓延させました。これまで中国人は、『中国共産党が経済的自由を保障してくれるなら、政治的自由はあまり存在しなくても構わない』と考えてきました。しかし武漢の状況から、富裕層や中間層の中にも『言論の自由がなければ、命に関わる事態が発生する』という考えが広がりつつあります。環球時報の社説は、中国共産党が窮地に追い込まれていることを逆説的に示しているのです」(同・石平氏)

 先に、中国外務省の報道官が情報を隠蔽したという指摘に噛みついたことを紹介したが、別の報道官は珍説を披露して世界の笑いものになっている。

 NHK NEWS WEBが3月13日に報じた「『感染症は米軍が武漢に持ち込んだかも』中国報道官が投稿」の一部をご覧いただこう。

《中国外務省の趙立堅報道官は12日夜、ツイッターで感染が拡大している新型コロナウイルスについて「アメリカで初めての感染はいつ発生し、何人が感染したのだろうか?この感染症は、アメリカ軍が武漢に持ち込んだものかもしれない。アメリカは透明性をもって、データを公開しなければならない。説明が不足している」などと書き込みました》

 ちなみに環球時報は英語版の公式サイトも運営しており、そちらの見出しは「沸系」も「反省」も出てこない。「いくつかの国は、ウイルス問題を深刻に捉えるべきだ(Some countries should take virus seriously)」というものだ。

 欧米向けと国内向けで、使い分けをしている。欧米にもの申すための社説と思いきや、非常にカッコ悪いと言うほかあるまい。

週刊新潮WEB取材班

2020年3月20日掲載

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