「私はコロナウイルス撒いたかも」長距離運転手が激白 感染者発生の病院で手術受ける

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保健所が…

 仮にこの長距離運転手が有田病院でウイルスをうつされていたとして、彼は以降、

「仕事で九州から関東まで広範囲にわたって移動し、10県から20県には立ち寄っています。千葉県でも感染者が確認されましたが、私は千葉にも行っていました。荷下ろしなどの際に、現地の人とも接触しています。千葉の感染者は、もしかしたら私がうつしてしまったのではないかと思うといたたまれません……」(同)

 彼が倦怠感と「寒気」を覚えた2月13日以後、発熱、関節痛と症状の数は増えていった。これらはまさに、新型肺炎の典型的な症状だった。

 体調不良と罪悪感を抱えながらも、慢性的な人手不足に喘ぐ運送業にあって、この長距離運転手も簡単に仕事を休むことはできず、和歌山に戻って保健所に電話できたのは15日のことだった。しかし、

「私の発熱は37度台でした。すると保健所は、熱が38度以上ないと新型コロナウイルスの感染検査は受けられないと断ってきた。東京都では、濃厚接触が疑われる人は全員検査を受けているというのに、なぜ和歌山では、やはり濃厚接触が疑われる私を検査してくれないのか。同じ国民で税金も払っているのに、どうして自治体によって受けられるサポートが違うのか。一国民として、怒りを禁じ得ませんでした」(同)

 その後、彼は「感染源」の可能性がある有田病院へと向かうことになる。だがそこでも、

「熱はあるか、咳は出るかといった簡単な問診票に記入しただけで帰されました。その後、なぜか戻ってきてほしいと病院から連絡があり、再び病院に行きましたが、受けられたのはインフルエンザの検査とCTだけで、新型コロナウイルスに関しては診てもらえませんでした。ちなみにインフルエンザは陰性で、CT検査で喉が腫れていることが分かりました」(同)

 彼の自宅近くには心筋梗塞を起こしたことのある義理の両親が住み、頻繁に行き来をしている。自分が感染者だった場合、万が一にもその両親にうつしてはならないと、彼は体調が悪い中でトラックでの「車中泊」を強いられた。

 和歌山県健康推進課はこう説明する。

「新型肺炎はインフルエンザなど他の感染症と症状が似ていますので、単純に熱があるというだけで検査が受けられるわけではありません。もちろん、感染者と濃厚接触をしている可能性が強く疑われる場合は直ちに検査の対象となりますが、その方と保健所の間で誤解が生じていたのかもしれません」

 いずれにせよ、「濃厚接触疑惑者」が「野放し」にされていたこの話を聞いて、件(くだん)の長距離運転手でなくとも背筋が寒くなるのではあるまいか。

週刊新潮 2020年2月27日号掲載

特集「世界から忌避される『大感染列島』ニッポン」より

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