埼玉県は大野新知事の「あと数マイルプロジェクト」でダサイタマを払拭できるか

国内 社会 2020年2月23日掲載

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“ダサイタマ”と揶揄される埼玉県。映画化もされた人気マンガ「翔んで埼玉」の作中では、「埼玉県民にはそこらへんの草でも食わせておけ!」などと言われたい放題。

 そんな埼玉disにもめげず、2019年に実施された埼玉県知事選や参議院埼玉県選挙区補欠選挙では「翔んで埼玉」のキャラクターを使ったチラシを作成。自虐な手法で、逆に埼玉県のPRにつなげた。

 東京都に隣接する埼玉県の人口は約734万人。東京都・神奈川県には及ばないものの、都道府県別の人口では、大阪府・愛知県に次ぐ5位にランクインしている。同じく東京都に隣接するライバルの千葉県は約628万人。人口規模だけを見れば、100万人以上もの大差をつける。

 今年、新たに就任した大野元裕県知事は、いくつかの選挙公約を掲げていた。なかでも強烈に主張していたのが、交通アクセスの充実のために鉄道網を延伸する“あと数マイルプロジェクト”だ。

 734万県民のうち、日常的に鉄道を利用するのは主に東京都へ通勤・通学する埼玉都民が大半を占める。つまり、埼玉県にとって埼玉都民の存在は無視できるレベルではない。それだけに、埼玉県において交通ネットワークの整備・充実は大きな課題になっていた。

「大野県知事が掲げた“あと数マイルプロジェクト”には、多くの鉄道構想が謳われています。これら鉄道網の整備は国の交通政策審議会が決める部分も多いので、埼玉県だけで決められません。そもそも“あと数マイルプロジェクト”は鉄道に限定した話ではなく、バス網の充実、そして道路の整備なども含まれています。それでも、埼玉県にとって鉄道網の充実、特に延伸が重要課題だと認識はしています」と話すのは、埼玉県企画財政部交通政策課の担当者だ。

 大野県知事が掲げる“あと数マイルプロジェクト”には、主に日暮里・舎人ライナーの埼玉への延伸、大江戸線の延伸といった東京都と埼玉県境で途切れている路線を埼玉県内まで引き込もうとする内容が目立つ。

 東京都と埼玉県とを鉄道で結ぶことができれば、埼玉都民にとって恩恵は大きい。しかし、日暮里・舎人ライナーも大江戸線も、東京都が運行している。そのため、延伸には東京都との協議が不可欠になる。現実的な構想とは言い難い。

 一方、“あと数マイルプロジェクト”で県内市町村からもっとも期待が高まっているのは、埼玉高速鉄道の浦和美園駅以北への延伸だ。

 埼玉高速鉄道は、さいたま市の浦和美園駅から川口市を通って東京メトロ南北線の赤羽岩淵駅までを結んでいる。埼玉高速鉄道は、すでに埼玉県内には路線が敷かれて、鉄道は運行されている。それを踏まえると、厳密には「あと数マイル」ではない。

 それでも浦和美園駅から北への期待が高まっているのは、長い歳月をかけて調査・交渉をしてきた経緯があるからだ。

「浦和美園駅から北への延伸は、2000年から話し合いが始まっています。しかし、事業性の観点から思うように進んでいないというのが実情です」と話すのは、さいたま市都市戦略本部未来都市推進部の担当者だ。

 人口減少が始まった今般、47都道府県で人口5位の埼玉県といえども、新しい鉄道を整備することには二の足を踏まざるを得ない。特に、昨今はいくら公共性・公益性の高い鉄道であっても、黒字化が見込めなければ厳しい批判に晒される。容易にGOサインは出ない。

「浦和美園駅からの延伸に対して、さいたま市は居住人口や交流人口の増加を促す沿線開発に取り組んでいます。そうした取り組みを進めるのと同時に、浦和美園駅以北をどうするのかといった話も進めています。浦和美園駅は埼玉高速鉄道の駅ですが、そこから延伸する場合、そのまま埼玉高速鉄道線とするのか、はたまた新たな事業者に運行を任せるのかといったことも決まっていません」

 さいたま市が進める延伸計画では、延伸した区間で快速運転を要望している。快速運転を実施するには、先行する電車を追い越すための待避線が必要になる。埼玉高速鉄道にも乗り入れ先の東京メトロ南北線にも、そうした設備はない。

「快速運転のため、わざわざ待避線を新設するのは、莫大な工費・工期がかかります。それは現実的ではありません。市では“追い越しをしない快速電車”を考えています」(同)

“追い越しをしない快速電車”の運行では、あまり意味がないようにも思える。しかし、各駅停車ではない速達列車を運行させることで、自治体は快速電車の停車駅に開発リソースを集中させることができる。“追い越しをしない快速電車”は、いわば選択と集中なのである。

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