新型コロナで魔の航海に…「クルーズ船」乗客からは怨嗟の声

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心身共の疲労が…

 クルーズを主催する運航会社は、このクルーズの全代金に加え、行き帰りの交通費や寄港地での観光ツアー代金まで払い戻しすることを公表。少なく見積もっても10億円を超えると見られている。

「船会社の対応は適切だと思っていますけどね」

 と言うのは、前出の70代の男性乗客である。

「それでも混乱はある。例えば、薬の問題。持病のある人は服用薬を申告してください、とアナウンスしていたのに、頼んで5日経っても届きません。船には届いているのですが、それぞれの乗客への仕分け作業が終わっていないそうです。館内アナウンスも遅くて、感染者が何人出た、という知らせはメディアの方が2時間も早いですよ」

 また、厚労省については“お役所仕事”で効率が悪すぎる、と感想を漏らす。

「検査の際、検査場の前に20人くらいの列が出来ていたんです。2時間半も待たされた人もいたとか。その間に感染が広がった可能性もありますよね。呆れた様子で“早く検査してくださいよ”と言う人もいました。少しずつ呼んだら良かったと思いますが」

 感染のおそれが高まる中、ここに最低あと1週間は閉じ込められざるを得ないのだから、乗客の苦悩は計り知れない。場合によっては、また下船が延びる可能性もある。

「現在、乗客の皆さんは部屋ごとに隔離されている。これだけ爆発的に広まったのは、その前の感染が原因でしょう」

 とは、元厚労省医系技官の木村盛世医師である。

 確かにそれ以前は、船上で人は自由に行き来していた。レストランもバーも営業していた。

「その後、乗客の皆さんは、一転して部屋に閉じ込められ、運動もままならない状況に置かれた。心身共に疲労が蓄積しています。そのため、免疫機能が低下し、感染しやすくなったり、重症化しやすくなったりしてしまったのでしょう。今回の新型ウイルスは規模からいっても、災害レベル。災害被災地の方に対して行うのと同じように心理ケアを行う必要がありますが、今のところそれが十分に行われていないと思います」(同)

 このままでは、状況がより悪化するのは目に見えているというワケなのだ。

週刊新潮 2020年2月20日号掲載

特集「『魔の豪華客船』咳と怒号がこだまする『限界船内』」より

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