野村克也さんが語っていた「投手サッチーを失って」 晩年のぼやきインタビュー

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「お酒を飲まないから」

〈かつて理論派で鳴らし、ぼやきも、さり気なく論理で貫かれていたノムさんである。だから、いまの日本のプロ野球界に対しても、筋の通った提言をしたいという。〉

 まず巨人の原辰徳監督ですけど、1回クビにしたのに、また呼び戻すというのはどういうことでしょうか。実力がないからクビになったのに、数年で戻す意味がわからない。いまの野球界がいかに人材不足かということが露呈しています。僕が野球評論家として仕事を続けていられるのも、野球をおもしろく語れる人材が不足しているからです。

 最近の若手にも、興味を引く選手はハッキリ言っていないかな。60年も野球界にいるから、大谷翔平くらいでは特に感動もしませんよ。今年の新人にも、注目している選手は特にいません。やっぱりONが一番の天才で、それ以降、彼らほどの才能の選手は出てきていないんですよ。

 マー君(田中将大)については、1年目が弱い楽天でよかったと思う。強いチームに行っていたら、きっと2、3年は2軍で下積みをさせられたでしょう。楽天という、新人でも試合に出られる環境にいたからこそ、成長できたんだと思いますよ。当時、「2軍から育てたほうがいい」と主張する人が多かったけど、最初から1軍で試合に出して正解だったね。

 しかし、最近は有力な選手がすぐ海外に行ってしまって、これは日本のプロ野球にとっては大きな損失ですよ。韓国みたいに、一度海外に挑戦した選手は戻って来にくい仕組みにしたほうが、いいんじゃないですか。ルールを変えないままでは、プロ野球に発展はないと思います。

 いまのプロ野球は、はっきり言ってつまらないでしょ? 野球の試合、観ますか? そもそも、いまの選手や監督は「野球とは?」という問いに答えられませんよ。僕なら「頭のスポーツだ」と答えます。サッカーやバスケットボールと違って、プレーとプレーの間に間(ま)をとりますが、その時間はなんのためにあるのか。それは、考えて相手に備えるためです。この間を使って、いかに相手を分析するか。それが本来の野球の醍醐味なんです。でも、いまの試合を見ていても、選手や監督の思考が伝わってこないんですね。

〈野球愛ゆえに、だんだんヒートアップするノムさんだが、それも健康であればこそ。無病息災の秘訣を、最後にあらためて聞いておきたい。〉

 一番大切なのは、お酒を飲まないこと。「酒は百薬の長」なんていう言葉もあるけど、あれはウソだな。飲んでいると耐性がつくから、飲めば飲むほど酒量が増えて、いいことは一つもないと思います。僕は体質的に一滴も飲めないし、サッチーもお酒は飲めなかったな。45歳まで現役でやれたのも、お酒を飲まなかったからだと思います。

2020年2月17日掲載

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