企業に自分で謝れない学生が続出 内定辞退セットを発売した「日本法令」に聞く

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〈社長が内定通知書をわざわざ地方から今住んでいる都心の方へ持ってきてくれるそうです。(中略)どのようにして断ればいいのでしょうか〉

「Yahoo!知恵袋」を開くと、こんな相談が続々と出てくる。リクルートによれば、今年度の大卒求人倍率は1・83倍。就職戦線は売り手市場が続いているのだ。ところが贅沢な悩みというべきか、今どきの若者は内定を複数貰った時の断り方が分からないのだという。そんな迷える学生たちに手ほどきしてくれるのが「早めに伝えてスッキリしよう!内定辞退セット」(500円)だ。

 見た目はB5判サイズのパンフレットで、封を開くと便箋4枚と封筒が2枚、そして板紙で出来た“アンチョコ”が入っている。

 そこに書かれているのは、辞退用の文面である。

〈さて、大変申し上げにくいのですが、実は貴□の内定を辞退させていただきたく、お願い申し上げます〉

 貴の下が□になっているのは、相手が官庁の時は“省”、銀行は“行”などと学生が書き換えられるようにするためだ。これ以上は商品である文面をバラすことになるので差し控えるが、このアンチョコ板の上に便箋を載せて、文字をなぞると出来上がり。さらに詳しく知りたい場合は、説明書きにあるQRコードを読み取ると動画が登場、プロの講師が手取り足取り説明してくれるという仕組みである。

 発売元である日本法令に聞くと、

「当社は学校法人などと取引がありまして、就職担当の方とお話しすることがあります。それによると、折角貰った内定なのに学生がスマホからSNSを使って断ったり、ひどい場合は企業に連絡さえしないことも。一方で、ネットには“内定の断り方が分からない”という声が結構ありました。そこで、内定辞退のキットを作れば需要があるのではないかと考えたのです」(開発部の菊池理氏)

 すると手ごたえは上々で、大学の担当者から感謝の声もあったとか。それにしても、嫌みや叱責覚悟で内定を断りに行くのは社会人としての第一関門ではなかったか。昔は、採用担当者にお茶をぶっ掛けられたなんて話もあった。

 しからば、日本法令が、内定を出した学生から、このセットを使った辞退連絡を受けたらどう感じる。

「まじめで丁寧な学生さんと評価します」(同)

 昭和・平成の世は遠くなりにけり。

週刊新潮 2020年1月30日号掲載

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