韓国が竹島から最も近い「鬱陵島」を軍事基地化 軍艦常駐で日本を牽制する狙いも…

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島民が待ち続けた空港と「独島防衛」

 鬱陵空港も、竹島問題を背景としてようやく建設が決まった格好だ。

 島民にとって空港はかねてからの悲願だったが、平地の乏しい鬱陵島は建設費と採算性がネックとなってきた。そうしたなかで韓国政府が計画に着手した早い例の1つが、朴正煕(パク・チョンヒ)政権時代の1978年に立案された「独島総合開発計画」だ。「独島防衛」の一環として鬱陵島の戦略的な開発が検討され、空港建設のための現地調査が行われたという。だがこれは1979年に朴正煕大統領が暗殺されたことで、頓挫した。

 日韓の排他的経済水域問題が取り沙汰された90年代半ばにも計画が浮上したが、1997年からのアジア通貨危機にともなう経済危機によって立ち消えに。続いて島根県「竹島の日条例」制定で反日感情が高まった2005年から、メディアでまたその必要性が注目されるようになった。

 2009年には計画が本格化すると伝えられたが、政府は2010年に採算性がないと判断。しかし地元自治体=鬱陵郡及び慶尚北道(道は県に相当)は、その後も「独島防衛」をアピールして建設を求めてきた。国防部も竹島に駐留する警察部隊の支援などに活用可能と見ている、と当時の現地メディアは伝えている。

 やがて朴槿恵(パク・クネ)政権時代の2013年、政府の予備調査を経て事実上のゴーサインが確定。予算見直しで一時中断したものの、現在は来年4月の着工を控えている状態だ。ただし防波堤に日本が特許を持つ消波ブロックの採用が予定されているとされ、これを巡って建設事業者の対応などを問題視する現地メディアもある。

「軍事基地」化は不振のイカ漁を救えるか

 新しい港や空港整備はまた、違法操業する中国などの外国漁船の取り締まりに対する期待も大きい。鬱陵島は近年、代表的な特産品であるイカの漁獲量減少に悩まされている。主因の1つは中国漁船だ。中国は2004年に北朝鮮と協定を結び、北朝鮮水域で130~300トンクラスの底引き網船による操業を開始。大半が15トン未満の小型船で、荒波と格闘する鬱陵島漁民を尻目に、乱獲を続けているといわれる。鬱陵島のイカの販売量は、2010年の2898トンから昨年は750トンに急減。今年はさらに大幅な減少が見込まれる模様だ。

 空港はまた観光客誘致が見込まれる一方、緊急医療の面でも切実な需要がある。その象徴が、10月31日に竹島近海で7人の犠牲者を出したヘリコプター墜落事故だ。この事故は、操業中に負傷した漁民を搬送するため出動した本土の医療ヘリが、帰路に着いた直後に起こった。鬱陵島に海洋警察のヘリが常駐していれば結果は違ったのでは、と悔やむ声は多い。

 結果的に、地元自治体の利益誘導にひと役買う形にもなっている竹島問題。「軍事基地」化していく鬱陵島に、これからまたどんな予算が注ぎ込まれるのだろうか。

高月靖(ノンフィクション・ライター)

週刊新潮WEB取材班編集

2019年12月10日掲載

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