「串カツ田中」のサブスク“田中で飲みpass”が好調のワケ 忘れてはならないホットペッパーの教訓

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酒呑みはコスパだけでは満足しない!?

 串カツ田中は18年6月から全店で禁煙か分煙を達成し、大きな話題となった。当初は既存店の売上が前年割れとなるなど、客離れに苦しむ姿が報道されたりした。だが現在では、ファミリー客の取り込みに成功したほか、昼飲みのニーズを掘り起こすなど、“禁煙戦略”は成功を収めたという。

「ところが会社員など『お酒を飲みに来る』顧客は減少を続けており、その掘り起こしで『飲みpass』のサービスを開発したそうです。月の来店者数が増えるという成功を収めたわけですが、理由を私なりに分析しますと、1杯199円という価格帯はコンビニで売られている酒類と同じです。ビジネス街やターミナル駅などで、片手に缶チューハイやビールを持ち、こっそりと飲みながら帰宅している会社員をよく見かけます。あのような方々を、串カツ田中に呼び込めたのではないでしょうか」(同・千葉氏)

 会社員はチェーン居酒屋に特別な思い入れはないだろう。「とりあえず、どこでもいいよ」、「あそこが近いから入ろう」という消極的な判断から選ぶことが少なくない。だからこそ、競争が激しいわけだ。

「これまで『どうしても串カツ田中でないと嫌だ』という顧客は少数派だったはずです。それが『飲みpass』のサービスにより、串カツ田中は付加価値を生むことに成功しました。4人のサラリーマンが退社して飲みに行く際、1人が『俺、串カツ田中のパスを持っているんだ』と3人を誘うというイメージです。『串カツ田中でなければ』というニーズを創出できたのです」(同・千葉氏)

 とはいえ、油断は禁物だ。千葉氏は「2000年代にリクルートの『ホットペッパー』がブームだった時を思い出してください」と指摘する。

「繁華街の路上などで配られるフリーペーパーには、近隣飲食店の割引クーポン券が入っており、一大ブームとなりました。クーポンを掲載した店には多数のお客さんが詰めかけましたが、来客増は一過性で終わってしまった飲食店が大半です。結局、単にコスパが良いだけでは満足しないのが顧客心理です。最終的に私たちが最も重視するのは、店員の接客態度であり、店の居心地なのです」

 串カツ田中は「飲みpass」を開発することで、少なくとも一見客を増やすことには成功したのだろう。しかし彼らが2回、3回と来店するリピーターになるかどうかは不明だ。来客数だけでなく来店回数も増やすためには、やはり店員の愛想や客あしらいにかかっている。

 それこそ単に安い酒を飲むなら――その行動の当否はともかく――先に見たようにコンビニで缶チューハイを買い、路上でプルトップを開けば済む話である。

週刊新潮WEB取材班

2019年12月2日掲載

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