中日のレジェンドOBも阪神へ…「星野仙一人脈」で猛虎はペナントを奪還できるか?

スポーツ 野球

  • ブックマーク

Advertisement

“燃える男”故・星野仙一氏の教え子が阪神に集まりつつある。阪神は今オフ、元中日の井上一樹氏が新1軍打撃コーチに就任したほか、秋季キャンプでは通算219勝を挙げた元中日・山本昌氏を臨時コーチとして招聘した。山本氏はその指導が評価され、春季キャンプでも臨時コーチの就任が内定した。さるスポーツライターが語る。

「今季、阪神はなんとか3位に滑り込みましたが、得点が12球団ワーストで打撃陣が非常に苦しんだ一年でしたね。来季に向けて、打撃陣のてこ入れは急務。そこで白羽の矢が立ったのが、井上氏でした。井上氏は、中日の2軍監督や1軍打撃コーチを務め、2軍監督時代にはチームを『ファーム日本一』に導いています。一方の山本昌氏は引退後、母校・日大藤沢高の特別臨時コーチを務めるなど、コーチングについて積極的に研鑽を積んでいました。ですが、中日のレジェンドにもかかわらず、なぜか古巣からコーチ就任の要請は来なかった。そんななか、阪神の矢野燿大監督が臨時コーチとして、山本氏に声をかけたのです」

 2人の共通点は、いずれも矢野監督が中日在籍時のチームメートで、星野仙一氏が可愛がった教え子でもある。星野氏といえば、中日時代には2度のリーグ優勝を果たした。2001年シーズン限りで中日の監督を退任すると、阪神監督に電撃的に就任。低迷していた阪神を立て直し、03年には18年ぶりのセ・リーグ制覇に導いている。

 それ以前の阪神には「生え抜き」を重視しすぎる“伝統”が存在したが、星野氏の監督の就任でそれは完全に覆った。オリックスや阪神、日本ハムなどで活躍した、野球解説者の本西厚博氏は、星野監督が就任する前の阪神のチーム事情を知るひとりだ。

「阪神では生え抜きではない、いわゆる『外様』の選手がプレーすることは、本当に大変なことでしたね。これは実際にプレーした立場として感じたこと。例えば、僕はある試合で『逆転満塁本塁打』という強烈な結果を出したのですが、次の試合でスタメン出場ができなかった。阪神は、球界きっての“伝統球団”なので、仕方がない部分もあるのでしょうが。当時、阪神には『新庄剛志』という生え抜きの大スターがいたので、調子が悪くても、試合に出さないといけない、という暗黙の雰囲気がありましたね。新庄はすごく良い男なので、本当に申し訳なさそうにしていました」(本西氏)

 悪しき生え抜き主義を脱した今の阪神をみると、本西氏が語ったエピソードは“隔世の感”がある。本西氏は阪神の可能性について、こう続ける。

「やっぱり阪神が強くないと球界は盛り上がらない。阪神球団もこのままではいけない、と焦りを感じたのではないでしょうか。やはり、星野さんの影響力は大きく、“星野人脈”も生きている。阪神は生まれ変わるチャンスだと思います」

“星野人脈”のコーチ陣は阪神にどんな影響を与えるのだろうか。スポーツ紙記者が言う。

「阪神は2年連続で中日に負け越しており、苦手意識があります。井上さんと山本さんは中日の情報を豊富に持っているので、阪神としてはそれを活用したいところですね。また、臨時コーチの山本さんの評判が非常にいい。テレビの解説で見られるように、語り口が柔らかいうえ、選手と一緒になって改善点を見出していくスタイル。若手選手にとっては、非常に理解しやすいと思います。なぜ、古巣の中日はコーチにしないのか、疑問ですね」(スポーツ紙記者)

 秋季キャンプでは、山本氏が今季0勝に終わった元エースの藤浪晋太郎を積極的に指導する姿が印象的だった。前出のスポーツ紙記者がこう続ける。

「山本さんは、制球難に悩む藤浪にチェンジアップを投げさせることで、手首を立てる感覚を持つように指導していました。ボールをリリースする際に手首を立てるようになると、制球が安定するからだそうです。藤浪も練習ではできるようになってきているようで、課題は試合で実践できるかどうか。秋季キャンプの段階では、制球難を克服したと言い難いですが、春季キャンプでも山本さんの指導を受けて、完全復活への足掛かりにしたいところですね」

 星野氏の急逝から来年1月でまもなく2年……。“燃える男”の魂を引き継ぐ教え子たちが05年以来のリーグ制覇に導けるだろうか。

週刊新潮WEB取材班

2019年12月1日掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。