討ち入りにかかった費用は約9500万円! 映画「決算!忠臣蔵」公開記念・中村義洋監督×濱田岳対談

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うれしくて楽しくて

中村 感想なんか聞かせてもらってもいいですか。

濱田 普段は、まず作品の原作があって、そこから監督が脚本をおこして映画の撮影に入りますよね。だけど、今回はイレギュラーな形で映画の脚本が先にあって、そのストーリーに基づいて監督の小説が出来た。だから現場にいた人間としては、キャラクターの顔や動いている姿をこの目で見ているので、小説はとても読みやすかったんですよ。僕ら俳優は、これまで描かれたことがないタイプの赤穂浪士を演じました。役者としては、とてもチャレンジングな話で、歴代の先輩方がやってきたことに対して全く違う視点で挑んだ。ですから、緊張というか、これをご覧になった先輩たちはどう思うのだろうという気持ちが、心のどこかにはあります。僕らが全てをやり遂げた後で、監督がさらにもう一度、あの撮影所で自分たちが演じた、まさに生きていた侍たちを、小説として世に出してくれた。彼らの存在を証明してくれたというか、それが本当にうれしくて楽しくて。陳腐ですけど、もう一回映画が見たくなってきました。

中村 真面目だね……。

濱田 真面目なことも言うんです!

中村 今年2月の終わり頃まで撮影をしていたじゃないですか。クランクアップ前後くらいから、プロデューサーと、この映画は小説にしたらいいんじゃないかって話をしていて、その時は僕自身が書くとは言ってなかった。でも、原作本の出版社である新潮社さんに小説の話を持っていったらOKを出してくれた。で、映画の編集も終わり、音の仕上げを残す前の6~7月くらいからかな。もう一生懸命に書きました。その時期に一緒に飲んだよね。

濱田 確かアフレコの時に小説の話を聞いたと思います。やはり、脚本と小説を書くことは、まったく違う作業になるんでしょうか。

中村 最初、新潮社さんに行って打ち合わせした時に、何枚書けるかわからないけれど1週間だけ書いてみるので、それを読んでやっぱりこれでは無理だと感じられたら遠慮なくおっしゃってください、と私から言ったんです。それで書いたら、いけるんじゃないかということになって。ただ、出した原稿には担当編集者から大量の赤字が入って戻ってくる……。あと「視点」というものを凄く注意されました。書いていく際の視点がすごく入り乱れていたんですよ。基本的には内蔵助の視点で書いているつもりなんだけど、不意に西村まさ彦さん演じる足軽頭の吉田忠左衛門の視点で書いてしまっていたり。それはダメですよって言われ、「いや、おれ視点がいっぱいある小説読んだことあるよ」なんて言ってはみたものの、家帰って読み返してみたら一冊もなくて(笑)。だけど忠臣蔵って登場人物がたくさんいるから、みんなの視点を描きたくなっちゃう。それくらい魅力的な物語だからこそ、今でもこうして映画や小説が作られているのではないかと思うんです。

中村義洋(なかむらよしひろ)
1970年生まれ。映画監督、脚本家。主な監督作品に「ゴールデンスランバー」「残穢―住んではいけない部屋―」「殿、利息でござる!」「忍びの国」など。

濱田岳(はまだがく)
1988年生まれ。1998年、ドラマ「ひとりぼっちの君に」でデビュー。中村監督作品には、対談でふれたものの他に「みなさん、さようなら」「予告犯」など多数出演。

週刊新潮 2019年12月5日号掲載

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