囲碁「最後の無頼派」依田紀基元名人“日本棋院は説明責任果たせ”

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 史上最年少プロ棋士の仲邑菫(なかむらすみれ)初段(10)が誕生し、芝野虎丸九段(20)が10代では初の名人位に就いた。何かと明るい話題が続く囲碁界だが、日本棋院の小林覚(さとる)理事長(60)と“最後の無頼派”と呼ばれる依田紀基(よだのりもと)元名人(53)との間で激しい争いが続いている。

 10月31日、都内で記者会見を開いた依田元名人は、こう口火を切った。

「謝罪文をお送りしてから、すでに4カ月間が経過していますが、今現在、日本棋院から何ら処分を受けていません」

 依田元名人は、6月にツイッターで執行部が棋院を私物化していると批判。それを咎められたため、日本棋院に謝罪文を提出していたのだった。

 これでコトは収まるかに思えたが、7月20日に殺虫剤大手・フマキラーの「フマキラー囲碁マスターズカップ」が今年で終了すると発表された。小林理事長はその理由を、準決勝で不戦敗になった依田元名人の悪質なツイッターが大会の名を傷つけたため、とメディアに説明していた。

 だが、当初フマキラーの広報担当者が本誌(「週刊新潮」)に語った中止理由はこんなものだった。

「私どものあずかり知らないところで、棋院と依田さんとの間でトラブルがあったと聞いています。対局中止など運営上、看過できない問題もあり、大会の継続が不可能だと判断した結果です」

 フマキラーは依田元名人のツイッターを問題視して、スポンサーを降りたわけではなかったのだ。

 準決勝の不戦敗について、依田元名人は経緯を会見でこう明かしている。

「フマキラー囲碁が開催された広島市のホテルで対局前日、小林理事長から“依田は対局する資格はない”、“依田を優勝させるわけにはいかない”と不戦敗を申し渡されて、前夜祭の出席も許されませんでした」

 つまり、依田元名人は自ら対局を放棄したわけではなく、小林理事長から勧告されたともいうのである。

 とはいえ、日本棋院の理事会で依田元名人の対局中止が議論された形跡はなく、定款や公になっている規約を見ても理事長が対局中止を決定できる職務権限の項目は見当らない。依田元名人の主張が事実ならば、小林理事長の“独断”になる。

 日本棋院広報室に理事長の権限を聞くと、

「依田元名人の発言は事実無根です。現在、11月中に処分を発表する予定なので、その時に理事長の権限についてもご説明します」

 依田元名人を直撃すると、

「フマキラー囲碁について、私はツイッターで一切言及していません。ですからなぜ、大会の名に傷をつけたと、小林理事長から対局中止を勧告されたのか、まったく理解できません。日本棋院は公益財団法人なので、そのトップは棋戦中止の説明責任を果たすべきでしょう。きちんとした対応がなされなかった場合、法的措置に訴えるのも選択肢の一つだと考えています」

 反撃に出た最後の無頼派棋士。激しい争いも終盤を迎えているが、果たして勝敗はいかに。

週刊新潮 2019年11月21日号掲載

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