上の子がアスペルガー? 下の子がカサンドラ? 止まらない負の連鎖

星乃林丹 私ってカサンドラ!? 国内 社会 2019年9月23日掲載

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「カサンドラ症候群」(以下、カサンドラ)とは、発達障害の一種・自閉スペクトラム症=ASD(旧診断基準名の「アスペルガー症候群」〈以下アスペルガー〉を含む)の夫や妻、あるいはパートナーとのコミュニケーションが上手くいかないことによって発生する心身の不調です。特に夫婦関係で多く起こると言われていますが、最近ではASDの家族や職場・友人関係などを持つ人に幅広く起こり得ることが知られています。

 本連載「私ってカサンドラ!?」では、カサンドラに陥ったアラフォー女性ライターが、自らの体験や当事者や医療関係者等への取材を通して、知られざるカサンドラの実態と病理を解き明かします。前回に引き続き、カサンドラの臨床に携わる臨床心理士の滝口のぞみ先生への取材の様子をお届けします。

 バックナンバーはこちら https://www.dailyshincho.jp/spe/cassandra/

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きょうだい間でもカサンドラになる

「返事をしてほしい」など、普通の態度で頼んでいる間は無視し続ける癖に、我慢できなくなって私が感情的になったら怒り狂った元夫。

「なんでお酢なんかをかけるんだ、信じられない! 料理人が作ったものに調味料を足すのは失礼だろう!」と怒り狂っておいて、「あなたこそマヨネーズと唐辛子を何にでもかけるのにハマってるじゃない」と言い返されれば「俺の食べ方に文句があるのか!」と切れた。

 子どもが泣けば、口癖のように「悪いママですね〜」と私のせいにしてあやし、「嫌だからやめて」と言えば執拗に繰り返した。

 自分のやっていることが人を怒らせることであることはわからないのに、怒られるのは嫌がる。自分のしたことと同じことをやり返されるのは不愉快に感じる。「嫌だからやめて」と言われたことに関して、じゃあこれはどうだ? とばかりに細かい部分を変えてなんども同じことをする。

 されたことに傷付いたのはもちろんだが、傷付いたことをどれだけ訴えても、彼に全く理解されないのが恐ろしかった。

 どれだけ時間をかけて説明しても伝わらないことがある、話しても分かり合えないことがある。この事実を認めるには時間がかかる。

 少なくとも、一人の人との一つのトラブルだけでは「分かり合えない」なんて断じることはできない。

 だから同じやり取りを繰り返し「本当にまったくちっとも分かり合えない」という新しい真理を飲み込んで、自分がカサンドラであることを自覚する頃には同じ部分をえぐられ続けた心の傷はグズグズになっている。精神的にボロボロなのだ。

 そして自分がカサンドラであることを自覚し、どうやったって分かり合えない人がいると思い知ったとき、今までは見えていなかったその「分かり合えない」人たちが元夫以外にも結構な割合で存在することが見えてくるようになる。

「あ、これはもしかして」とピンと来るときは、その相手とのやりとりに問題が起こり、相手が怒り始めたときだ。

「そんなつもりじゃない」と、なんとか自分の真意を伝えようとしてももう遅い。相手の怒りを和らげることはできないし、相手はこちらのせいで怒っていると言う。

 フラッシュバックを起こし、パニックになりながら、第三者に意見を聞こうとする。

「私がおかしいの?」

 でも普通の人は、実際に何がどのような順番で起こったのかなどという細かい部分には興味を示さず、もちろん事実の検証もしてくれない。そして決まって言うのだ。

「そんなに誰かを怒らせるなんて(もしくはそんなことになるなんて)あなた一体何したの?」である。

 その質問に耐えられるカサンドラがいるだろうか。

 そう言われた場で感情的に乱れ、第三者になんとかわかってもらおうと「相手が悪い」と捲し立てたら最後、トラブルメーカーの烙印を押されて社会的に終了する。だからカサンドラは孤立するのだ。

 しかもだ。

「あ、これはもしかして」と、我が子に感じるケースも少なくない。

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