ガラケー女人違い、弁護士大量懲戒請求…SNS社会「歪んだ正義」の暴走

国内 社会 週刊新潮 2019年9月5日号掲載

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地元の懲戒請求者を提訴

 騒動の発火点となった「余命三年時事日記」とはいかなるブログなのか。ネット右翼などに詳しい、文筆家の古谷経衡(つねひら)氏の話。

「問題の発端となった『余命三年時事日記』は老舗のネトウヨブログです。2000年代前半に開設され、現在の管理人は3代目。老舗ゆえ、読者の年齢層も高めで、50代から70代が主な読者となっています。懲戒請求の一件は、お金と時間に余裕がある方々が、偏った知識を得てしまったのでしょう。若い人に比べるとネットリテラシーが低いこともあり、軽い気持ちで懲戒請求の書類を返送してしまったのだと思います」

 さらには、先の司法記者曰く、次のような事態も起きていて……。

「8月23日、札幌弁護士会所属の弁護士3名が、彼らに懲戒請求をかけてきた52名を相手取り、札幌地裁に提訴しました。これまで各地の弁護士が請求者を訴えるときは相手をランダムに抽出していたのですが、今回は札幌の弁護士が、地元北海道内に住む請求者だけを選んで提訴したのです」

 その3名のうちの一人、皆川洋美弁護士はこう話す。

「私は960通の懲戒請求をかけられました。『余命三年時事日記』を見ていたわけではないので、懲戒請求の呼びかけは知らなかったのですが。共同不法行為として損害賠償請求をし、弁護士1名につき550万円を、52名に連帯して払ってもらいます」

 相手を道内に絞ったのは、自分の生活圏に請求者がいる可能性もあるため。請求者が、日ごろ接する医者やタクシー運転手などかもしれず、落ち着いて暮らせない。ふだん接触がある人が請求者なのだとしたら、訴訟によって反省をうながせれば、との思いがあるという。

 同じく960通の懲戒請求を出された、東京弁護士会の北周士弁護士は言う。

「ネット空間での発言は、ある程度の自由が許されると思います。しかし、現実空間での業務妨害に当たる行為はいけません。ブログを読んで意見を主張するのと、実際に懲戒請求を送るという行為のあいだにはハードルがあると思うのです。私も請求者をランダムに選んで訴えましたが、一度に全員を提訴すると紙の重さが3トンにもなるんですよ」

 このような請求合戦はいまなお各地で進行中だ。不特定多数を煽って“暴走”に火をつけた“震源地”、「余命三年時事日記」の管理人はどう考えているのか。弁護士からの提訴対象にはなっていないが、本来、もっとも責任を問われる存在と思うのだが……。

 埼玉県内の管理人宅を訪ねると、インターフォンからは「あー、本人はおりません」という高齢男性の声。

「(管理人は)昔からの囲碁仲間の一人で、私は留守番を頼まれているだけなんです。連絡先は内緒にするように言われているのでね。口が裂けても言えない。でも、(管理人は)日本の国益にそぐわないような活動をしている人たちを弾圧というか、告発してますから」

 と、単なる囲碁仲間と思えぬ同志意識が透けて見える、含みを持った答え。先の古谷氏は言う。

「懲戒請求を出した請求者も、彼ら相手に訴訟まで起こす弁護士も、ネット社会に踊らされているという感じは否めないですね」

 それぞれの「正義」に基づく行動が、トホホな事態となっているのもまた事実である。

特集「燎原の火の如し! 『SNS社会』の『正義』の暴走」より

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