「FOREVER 21」は破産申請を検討 苦戦が続く欧米FFでは「ZARA」が一人勝ち?

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近隣で生産する強み

――ファストフードのみならずファストファッションでも、コスパはもちろんスピードが重要なのだという。

齊藤:人気のある商品でも売り切れてしまっていては、客足は遠のきます。だからといって、闇雲に製造して在庫を増やす訳にはいきません。しかし「H&M」は、世界的な原材料の高騰と人件費の上昇の中で低価格を追求するため、人件費の安い国を求めてバングラデシュやカンボジアに生産拠点を移行しました。そのため、生産に6~7週間もかかるようになり、マーケットに対応することができなくなったのです。低価格競争に巻き込まれて、生産に時間がかかるようになったために、在庫率が上がるという結果になっています。一方で、EC(ネット通販)への対応も遅れてしまいました。

――ファストファッションは今後、EC化が進むという見方がある。実際、多くの店舗を持たずとも、ネットを中心に展開するブランドも出現している。

齊藤:英「ブーフー(boohoo)」や米「エバーレーン(Everlane)」といったブランドが伸びています。しかし、ネットのみで展開するのは、特に日本では難しいでしょう。ファッションの場合、画面に映った写真だけでは質感も分かりませんし、試着するなり、体に当ててみないと、似合うかどうかもわからない。またオンラインは、単体販売の志向が強いため、コーディネートが想像しにくいということも挙げられます。何より、単価が安いファストファッションの場合、送料を考えると収益の上がらない商品も出てくる。ECは必ずしも万能ではありませんし、世界第6位の「プライムマーク(PRIMARK)」というブランドはECはやらないと宣言しているほどです。

――ファストファッションのEC化は成功しないのだろうか?

齊藤:いえ、重要なのはバランスの問題です。オンラインで情報を得るのは今や常識ですからね。顧客はオンラインで情報を得て、店舗で商品を確認。そして購入は、オンラインでも、店舗で受け取ってもいいでしょう。店舗とECとの併用というバランスがいいのが「ZARA」です。「ZARA」や「ユニクロ(UNIQLO)」は“クリック&コレクト”、つまり顧客がオンラインショッピングサイトで購入した商品を、宅配ではなく、顧客の都合のよい時間に店舗で受け取ることができます。この方法ならば、店舗への物流に注文商品を加えるだけですから、余計な送料はかかりませんし、顧客も都合の良い時に取りに行けばいい。店舗に来ることで、他の商品を購入することも考えられますからね。また「ZARA」は、収益のいい店舗はより広く、不採算の店舗は閉め、さらにオンライン化を拡大という方針を固め、今年度には計画を完了する予定です。実際、昨年度は出店も減らしていました。そもそも「ZARA」は、原材料調達・生産管理・物流・販売というサプライチェーンの全体管理を行っているのが強みで、さらに業界では最速と言われる商品企画生産を行ってきました。自国のスペインやポルトガル、モロッコ、トルコなど近隣圏で生産することによって、コストは多少上がっても、同じ商品の追加生産であれば2週間、新商品も4週間で生産を可能にしてきたのです。さらにEC化により、必要な量だけスピード生産を行うという強みが加わりました。当分の間、「ZARA」の優位は揺るがないでしょうね。

 何でも“安く売るだけが生き残りの秘策”というわけではないのだ。

週刊新潮WEB取材班

2019年9月6日掲載

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