「北村一輝」が準主役の反日映画が大ヒット ソウルで鑑賞した本誌記者の感想は

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日本軍はいなかった

「鳳梧洞戦闘」は韓国の高校では、必ず教科書に載っており、日本軍の死者157人、負傷者300人に対し、独立軍の死者はたった1人とされる。朝日新聞は「韓国 独立の苦難語り継ぐ アジアの教室から」(1995年7月17日付)と題して、こう報じている。

〈六月末、ソウルしにある漢城科学高校の、三年生の国史の授業を見せてもらった。(中略)この日の授業では、一九一九年の三・一独立運動後に、各地で編成された独立軍の戦いぶりを取り上げた。一九二〇年に中国東北地方で日本軍に対して勝利を収めた「鳳梧洞(ポンオドン)の戦闘」「青山里(チョンサンリ)の戦闘」が中心だった〉

 さすが韓国通の朝日である。日本に勝利したことは事実であるようだ。

〈日本軍の韓国人虐殺を記した歴史書の一節も、スクリーンに映し、読み上げた。「かまでゆで、皮をむき、妻の前で夫を殺して見せ、妊婦の腹を刺し……。それでも、わが独立軍は屈しなかった」。残虐な行為の連続に、生徒からどよめきが上がった。金先生は終始、淡々と授業を進めた〉

 映画と同じ論調である。朝日の記者氏には当たり前の史実かもしれないが、日本人でこの話を知っている人がどれほどいるだろうか。日本の歴史家(現代史学)・秦郁彦氏に、どんな戦いだったのかを聞いてみた。

「ポンオドン? 知りませんねえ。ちょっと待って、韓国の国定教科書を見てみるから。ああ、あった、あった。1920年に満州でねえ……、当時、満州には100万人もの朝鮮人がいました。後に北朝鮮の国家主席となる金日成(キム・イルソン)もそうです。ただ、そのころ、満州の朝鮮国境付近に日本軍は駐留していません。一体、どういう戦闘だったのでしょうか。それほどの被害があったのなら日本にも記録があるはずですが、それに該当するような記録は見当たりません」

 記録がない?

「そうです。例えば、金日成も満州において抗日活動に部隊指揮官として参加したということですが、これも記録がない。日本人の研究者も、そう言っているからには、何らかの根拠、事実があるのではないかと探したのですが、見つかりませんでした。おそらく日本の駐在か何かを襲った程度だったのでしょう。それを手柄話にした訳です。このポンオドンの戦闘というのも、その程度かもしれませんね。三・一運動後は、確かにあちこちで独立運動が起こっていますが、すぐに鎮圧されていますから。そもそも三・一運動というのも、かつてはそれほど良しとされていませんでしたからね。独立運動と言っても、その後四半世紀も併合されたわけですから。三・一運動が見直されたのは、現在の文在寅大統領になってからです。彼が韓国誕生の話として賛美し始めたのです」

 その集大成が映画「鳳梧洞戦闘」だったわけである。現在、この映画は、アメリカ、カナダ、ドイツ、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク、オーストラリア、ニュージーランド、中国、シンガポール、台湾、フィリピン、インドネシア、マレーシア、タイの15カ国での公開が決定したという。

 そんな大作で、準主役といってもいい日本兵を演じた北村だが、公式ホームページには世界公開のお知らせどころか、「鳳梧洞戦闘」出演の報告もない。芸能記者は言う。

「韓国映画から世界へと出て行こうと考えていたそうですから、オファーが来た時は願ったり叶ったりだったはず。しかし、今では頭を抱えているみたいですね。『週刊新潮』(5月30日号)が報じたように、事務所の反対も押し切り、“どんな役でもこなすのが俳優”との信念で韓国入りしたそうです。実を言うと、クランクインは昨年8月。まさか1年後の公開時に、ここまで日韓の関係が悪化しているとは思わなかったのでしょう。9月30日スタートのNHK朝ドラ『スカーレット』では、ヒロイン・戸田恵梨香(31)の父という重要な役どころですからね。今は余計なことを言うより、黙っていたほうがいいと考えているのでは」

 アクション映画の悪役ならまだしも、プロパガンダ映画となると、日本人の反感を買うかもしれない。こうなったら、この反日映画はどのように作られていったのか、全て証言してみてはどうだろうか。

週刊新潮WEB取材班

2019年8月30日掲載

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