「新宿駅」は開業から134年、ずっと工事中 「高島屋」地下には新幹線用スペースも

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2つの新宿駅

〈1904(明治37)年1月、新宿駅では大々的な改良工事が始まっていた。甲武鉄道の電化や山手線の複線化に対応するためと、日々増大する輸送需要に対処するため、新たな駅本屋を建設する、構内を拡大してホームや留置線を増設する、電車庫を新設するという大規模な内容だった。(中略)面白いことに、電車用ホームのわずか200メートルほど北側の駅構内にもホームがもう1本設けられていた。甲武鉄道の電車は上りも下りも1つめの新宿駅を出たかと思うとすぐに、もう1つの新宿駅に到達した。2つの新宿駅は駅本屋側が甲州口、北側は青梅口と呼び分けられていたが、それぞれ別々に改札口が設けられており、両方ともれっきとした新宿駅だった〉

 開業から30年近く経って大正時代を迎えると、新宿駅はさらに拡充され、駅周辺にも市街を形成していった。山手線と中央線は新宿駅構内で平面交差していたが、大正初めには、増大する運転本数に対応するため、立体交差工事も進められた。

「1923(大正12)年の関東大震災以後、新宿駅の拡張工事が繰り返されます。関東大震災では、浅草など下町の被害が大きく、武蔵野台地の上は被害が少なかったので、住民の多くがそこへ引っ越した。そのため中央線、京王線、小田急線沿線の人口が軒並み増えて、その人たちが新宿へ向かったのです。乗客は延々と増え続け、駅を拡張してもすぐにキャパが一杯になるので、また拡張を行う、というのを繰り返した」

 1927(昭和2)年には、1日あたりの乗降客数は山の手線と中央線だけで5万7338人となり、東京駅の5万5707人を抜いて日本一となった。

「新宿駅は、たとえば渋谷駅のような“若者の駅”といった特徴がなく、万人の駅になりました。国籍、性別、年齢、貧富など、すべてをひっくるめて受け入れる駅です」

 第二次世界大戦で、新宿駅前一帯は焦土と化したが、それでも鉄道は走った。そして、新宿駅に初めて地下鉄が乗り入れたのは1959(昭和34)年、丸の内線・霞ケ関~新宿間が開業した1962(昭和37)年に新宿~荻窪・方南町間が開通し全線開業。工事はほぼ全線が開削工法で建設された。新宿通りを通行止めにして穴を掘り、地下2階部分にホーム、地下1階に改札口とコンコースを設け、最後に土を被せて新宿通りを復元するという大工事である。新宿駅と新宿3丁目駅の間は地下1階部分を通路でつないだ、初の地下街『メトロプロムナード』が誕生した。

「新宿西口再開発で、1971年の京王プラザホテルを始め、次々に高層ビルが建ち、さらに乗客数が増加します。当時の新宿駅は、1964年の京王百貨店、新宿ステーションビルディング(現・ルミネエスト新宿)、1967年の小田急百貨店本館、1976年新宿ルミネと次々とオープンし、商業ビルに三方を囲まれ谷間の駅のようになりました。駅施設を拡充するには、南に延ばすか地下に潜るしかなかったのです」

 実際、1978年に京王新線が開業した際は、新宿駅地下4階まで地下道を作った。1997年には、都営地下鉄12号線(大江戸線)の新宿~練馬間が開通したが、

「大江戸線の新宿駅ホームは、地上から36・6メートル下の地下7階に設けられています。大江戸線は都庁前から甲州街道の地下5階にある京王新線・都営新宿線の新宿駅の下をくぐり抜けているのです。新宿駅西口の地下道は、巨大な蟻の巣のように張りめぐらされていますよ」

 1984年には、新宿貨物駅が廃止された。

「鉄道の貨物輸送は、60年代から徐々にトラック輸送に切り替わっていきました。赤字を抱えていた国鉄は、貨物駅跡地を再開発することで、大きな収入源になると目論んだわけです」

 貨物駅のあった南口の再開発では、1996年にタカシマヤタイムズスクエア、1998年に新宿サザンテラス、そして2016年にはJR新宿ミライナタワーが開業。路線では、貨物線を利用して1986年に埼京線が新宿駅乗り入れ開始。1991年には、成田エクスプレス運転開始。2001年には湘南新宿ラインが開業した。

「新宿ミライナタワーの下に電車が通っています。線路と線路の間に鉄骨を打って、人工基盤を造り、その上にビルを建てるという高度な技術が駆使されています」

 2020年、東京オリンピック以降の新宿駅はどうなるのか。

「7番線から16番線のホームの上に人工基盤を造って、2~3階部分に東西を結ぶ広場を建設する予定だそうです。2022年に着工して2030年頃に完成する予定で、さらに、その広場の両端にある小田急百貨店や京王百貨店、ルミネエスト新宿は築50年を超えていますから、こちらも建て替える可能性があります」

新幹線の乗り入れ

「上越新幹線は、元々新宿駅を始発駅にしようと考えられていたのですが、建設費が7000億円を超えるため見送られたという経緯があります。現在、東京駅と大宮駅は、新幹線の容量が限界に近い。そのため、新宿駅の新幹線乗り入れは現実味を帯びています。実際、タカシマヤタイムズスクエアの地下には、新幹線用のスペースが確保されているのです」

 新幹線まで乗り入れたら、乗降客数はさらに膨れ上がり、工事も延々と続くだろう。新宿駅は永久に“完成しない駅”となるのだろうか。

週刊新潮WEB取材班

2019年8月27日掲載

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