「セブン」沖縄進出1か月 いよいよ始まるローソン、ファミマとの熾烈なコンビニ戦争

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 1987年にファミリーマートが、97年にはローソンが進出した沖縄の地に、ついにセブン-イレブン(以下セブン)が降り立った。併せて“沖縄フェア”を全国の店舗で展開したことからも、同社の意気込みのほどが窺える。このたびオープンした14店舗に続き、今後は更なる拡大を目指す方針だ。だが、『セブン-イレブンの真実』の著者・フリージャーナリストの角田裕育氏によれば、その先には、血を血で洗うコンビニ戦争が待っているというのだ。

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 7月11日、沖縄県初のセブンが14店舗同時にオープンした。リーディングカンパニーとして本土のコンビニ業界に君臨してきたセブンの進出を、沖縄の人びとは心待ちにしていたらしく、オープン早々、多くの客が訪れた。押すな押すなの盛況振りは、マスコミでも大々的に報じられた。

 既に沖縄県は、ローソンとファミリーマートの牙城となっており、コンビニそのものも沖縄県民には極めて身近な存在だ。それでもセブンは別格なのか、すでに加盟店従業員やオーナー希望者が殺到しているという。同社は将来的に、沖縄県で250店舗の出店を目指すという強気の戦略だ。

 しかし、そうした沖縄県民の歓迎ムードとは別に、同社の今後を懸念する声は少なくない。

「『帝国データバンク』の調査によると、250店舗も出店すれば北海道並みの過剰出店になり、沖縄のコンビニは飽和状態になる」(沖縄地元紙記者)

 現在、沖縄県にファミリーマートの店舗は325店あり、ローソンは233店。7月6日付の沖縄タイムス+プラス(WEB版)によれば、沖縄の人口10万人あたりのコンビニ数は38・6店と、全国で下から3番目の少なさだったという(全国平均は44・6店)。ところが、ここにセブンの250店舗が加われば55・9店となる。1位の北海道(56・6店)、2位の山梨(56・1店)に続く、全国3位の“多コンビニ県”に踊り出るのだ。

 ちなみに北海道が何故、過剰出店なのかというと、北海道は日本初のコンビニフランチャイズチェーンといわれるセイコーマート発祥の地であり、更に首都圏が災害などに見舞われた時、第2本社機能を設ける目的でセブンが創業初期に進出した地域。いち早くコンビニ文化が根付いた土地柄なのである。そのため、過剰出店になったというわけだ。

 話を沖縄に戻そう――。オープンから約1カ月が経過した現在も、沖縄セブンの売り上げは好調のようだ。

「オープン時の客足は1日2000人。さすがに減ったけれど、それでも1800人ぐらいはお客さんが来る」(沖縄県内のセブンオーナー)

 この数字については本土のコンビニオーナーも、

「開店から3週間が経過して客足減が1割なら、かなりの好調」

 と評価するが、「“皮膚感覚”では、ご祝儀相場の陰りが見えてきた」という声もあって、

「私の家の徒歩5分圏内にコンビニは5店もある。職場でもオープン当初はセブンで買い物をしたことが話題になったりしたが、既に冷めはじめている。地元の小売業者の間では、ご祝儀相場はせいぜい1~3カ月と言われている」(沖縄地元紙記者)

 沖縄に出店の余地ありと見たからこそ、セブンは進出を決めた。しかし、既に那覇市などの都市部では、飽和状態と言える状況だ。どのように出店をしていくつもりなのだろうか。セブン&アイ・ホールディングス広報センターに訊くと、

「他社さんとパイの奪い合いをするつもりはない。常に変化するお客様のニーズとの勝負」

 との答えが返ってきた。これは、鈴木敏文前会長(現名誉顧問)の「我々のライバルは競合他社ではなく、変化するお客様のニーズなのだ」という“イズム”にも則った回答だ。すなわち、一番手志向を常に模索し、他社を意識することを避けるわけだ。

 もっとも、加盟店を指導するOFC(店舗経営相談員)等を経験した元セブン本部社員のA氏は、首をかしげる。

「競合他社とのパイの奪い合いにならないわけがない。鈴木さんはそういうことを言っていられたが、現場は違う。実際は近所にローソンやファミリーマートなどが出来れば、相当意識もします。自分も時間のある時は、担当店舗のライバル店の偵察に行きましたから」

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