「佐々木朗希」の後味悪い幕切れ 進まぬ高野連の改革、“感動話”で商売する大人たち

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“千日評定”

「そもそも、責められるべき根本問題は、スケジュールの過密さなんです」

 と憤るのは、『甲子園という病』の著者で、スポーツジャーナリストの氏原英明氏である。

「現状、夏の甲子園の地方大会は、高校の期末試験が終わる7月の1週目からになる。すると、2~3週間で決勝までのスケジュールを組まなければいけない。そうなれば、連投を強いられるのは当たり前です。例えば5月辺りから土日を使って試合を組めば、エースが投げても十分な間隔が空き、故障を防げるような日程が組めるはずなのです」

 また、ライターの広尾晃氏も述べるのだ。

「未だに日本の高校野球界が球数制限に動いていないことも問題なんです。韓国でも台湾でも、高校生の大会では1試合100球程度の球数制限を導入している。野放しなのは日本だけです。仮に導入されていれば、監督が悩んだり、批難されたりする以前に、ルール上、選手を守ることが出来る」

 実は、こうした議論はかれこれ20年ほども論じられてきている。しかし、遅々として進まないのは、高野連を中心とした高校野球界の責任が大きい。

「“そろそろそういう問題を考えないといけない時期に来ている”と言いながらも動きが鈍い。責任を取りたくないからなのか、とにかく現状維持、自己の保身の方向に走りがちな組織であると思います」(氏原氏)

「高校生の身体のことより、連投に耐えて頑張った、という汗と涙の感動ストーリーで商売をしている大人たちに影響を与えないように、という気持ちが大きいのではないでしょうか。だから、いつまで経っても変わらない“千日評定”が続いているのです」(広尾氏)

 その一方で、タバコを吸ったとか、ガッツポーズが派手だなどという話には異様な速さで対応するのだから、何をか言わんや。まさに今回の一件の隠れた「戦犯」と言われても仕方あるまい。

 甲子園の夢が潰えたその週末、大船渡高校の周辺を訪れると、ユニホーム姿でランニングをする佐々木投手の姿が見られた。声をかけると足を止めて、

「すみません、学校に言われているんでお話は出来ないんです」

 と言い、頭を下げて走り去っていった。気温30℃超の炎天下。きっと彼は既に“その先”の何かを見据えているに違いない。

「大谷翔平を見た時も驚きましたが、佐々木の球威はそれ以上。163キロを目の前で見た時には、本当にキャッチャーが危険だと思ったほどの暴力的な球でした」(佐々木の取材を続けるライター・菊地高弘氏)

 それほどの才能が甲子園の土を踏めなかったことが、吉と出るか凶と出るか。監督の判断は「英断」か「独善」か。論争は果てないが、その決着は、今後の彼の活躍いかんということなのだろう。

週刊新潮 2019年8月8日号掲載

特集「大船渡『32歳監督』は壊れていた! 『佐々木朗希』の挑戦を後味の悪い幕切れにした『本当の戦犯』」より

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