京セラの「自然に優しい」太陽光発電がイワナ・ヤマメを全滅させた!

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土も固めないまま

 どうしてこうなるのか。工事関係者に尋ねると、

「京セラの子会社の下に下請けがいますが、県も“京セラの看板があるなら大丈夫でしょう”と、安心して許可を出した。工事は2017年末ごろ始まりましたが、手順が滅茶苦茶でした。木を伐採すると土地の保水能力が落ちます。だから木を伐る前か、遅くとも並行して、水を溜める調整池を設ける必要があるのに、それを作らなかったのです」

 別の工事業者に話を引き継いでもらう。

「県の指針で、雨を集める調整池の設置が定められているのに、当初それをまったく作らず、県に言われてようやく作った。ところが、その後も調整池に水が溜ると、ポンプを入れて濾過もせず強制排水していた。調整池の役割をまったく果たしていません」

 それにしても杜撰だが、なにゆえそうなるか。

「掘り起こした土は軟らかく、そのままでは降雨や少しの揺れで崩れます。そのため“転圧”といい、土に荷重をかけて固める必要があるのですが、それがなされていなかった。だから、調整池がすぐに土砂で埋まってしまい、そのたびに土砂を川に流していた。技術者のレベルも低すぎます」

 自然に酷な発電所。京セラコミュニケーションシステムの広報宣伝部は、

「川に土砂が流れ、調整池からも土砂を含んだ水が流れ、県から指導を受けたのは事実ですが、改善は進んでいます。補償金もお支払いし、川に溜った土砂については、協議することで合意しています」

 と答えた。しかし、これが例外ならまだしも、

「太陽光発電は、福島の原発事故以降、急速に進んだため、規制がないに等しい。自治体ごとに指針を設けるなどしているものの、業者は高い利益率を追い求めて工事費用を安く済まそうとするため、このケースのように平気で破られてしまう。その結果、全国で同様の被害が出ています」(さる科学ジャーナリスト)

 再生可能エネルギーの普及を謳う前に、その安全性を点検すべきではないのか。

週刊新潮 2019年8月1日号掲載

ワイド特集「ひいき筋が引き倒す」より

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