本塁打激増なのにロッテは低迷…「ホームランラグーン」新設は正しいのか?

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 千葉の空に、連日のように花火が打ちあがっているー。ロッテの本拠地・ZOZOマリンスタジアム(千葉マリン)には、今年から「ホームランラグーン」が設置された。従来の外野スタンド前方へフェンスを作り、せり出す形で客席を増加。両翼、中堅の距離に変化はないが、右中間、左中間の膨らみが極端になくなり、本塁打の出やすい球場となった。「本塁打は野球の華」と言われるが、思惑通り、昨年までを大きく上回る本塁打が飛び出している。

「かつて、甲子園球場に存在した『ラッキーゾーン』はいつの間にか、不必要なものとなっていった。しかし、千葉マリンでは「ホームランラグーン」という名称で復活を果たした。そこには打線の弱さが指摘されるチームへの起爆剤としてだけでなく、集客の目玉としても目論むロッテ球団の思惑がある」(ロッテを取材する野球ライター)

 千葉マリンでは「ホームランラグーン」と名付けられているが、かつて甲子園球場にあった「ラッキーゾーン」と同じものである。日本で初めて採用されたのが甲子園だった。1924年開場時の甲子園は両翼110m。選抜チームで来日したベーブ・ルースが「あの球場は大きすぎる」と言ったほど。そこで47年、金網フェンスでの「ラッキーゾーン」を設置し球場を縮小化、本塁打数の増加を図った。

 40年以上にわたって設置されていた「ラッキーゾーン」は、甲子園での本塁打数にどのような影響を与えたのだろう。

 高校野球の本塁打数は、撤去前1991年の春18本(32試合)、夏37本(48試合)だったが、撤去初年度92年には春7本(31試合)、夏14本(48試合)と激減した。しかし、30年近く経過した2018年は、春17本(35試合)、夏51本(55試合)とラッキーゾーン設置時を超えるほどの本塁打が出ている。

「一時期は飛ぶバットが問題になって高野連から反発力など規制が入りました。最近は、それが緩和されているので、単純にメーカー間の技術力勝負で飛ぶバットが生まれています」(野球メーカー担当者)

 身体的能力や技術力の向上、加えて金属バットなど用具の改良などが進んだ。全国レベルの高校球児では、ラッキーゾーンの有無は、現時点で本塁打数にそこまで影響は出ていないといえる。

 一方、甲子園を本拠地とする阪神はどうか。2018年の全本塁打数は85本で、甲子園ではわずか20本しか出ていない。ラッキーゾーンがあれば、本塁打数をアップが見込めるため、「復活」を求める声も少なくない。

「阪神は人気球団であり、本塁打が話題になることは稀だ。何より阪神ファンが求めるのは、本塁打ではなく勝利であり、集客に最も影響を与える要因だ。阪神の年間観客動員数は、リーグ優勝した03年が約330万人で近年トップ。そこからチームの低迷期が続き300万人を割る年も出るが、2位になった17年は約303万人にまで回復した。しかし翌18年は最下位で約289万人まで落ち込んだ。とにかく『ラッキーゾーン』があろうがなかろうが、勝てばいい」(球団関係者)

 阪神球団、甲子園球場サイド(どちらも同系会社)ともに、「ラッキーゾーン」を復活させる大きな理由が見当たらないというのが現実だ。

 一方、千葉マリンの「ホームランラグーン」は本塁打数や観客動員の増加につながっているのか。

 千葉マリンでのロッテの本塁打数は、18年70試合で36本だったが、19年35試合時点で早くも45本を超えた。このままいくと、最終的に18年の倍以上の本塁打数を記録する計算になる。しかし、肝心のチーム成績は前半戦ながら早くも苦戦が続きBクラスで低迷している。現状をみると、本塁打の激増はチーム力の向上に好影響を与えたとは言い難い。

 観客動員数に目を向けると、19年交流戦終了時で1試合平均約22,000人だった。球団史上最高を記録した18年は、1試合平均約2万3100人、合計約164万人(71試合)だったことを考えると、1試合あたりの動員数は減少しているが、健闘している。「ホームランラグーン」が観客離れを食い止めている役割を果たしているといえなくもないが……。

 他球団の本拠地でも「ホームランラグーン」の設置を検討する動きも出ているが、その動きが加速するかどうか、今シーズンのロッテ次第といったところか。

週刊新潮WEB取材班

2019年7月22日掲載

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