リニア中央新幹線トンネル工事にストップをかける静岡県知事の「思惑」

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 東京・名古屋を40分で結ぶリニア中央新幹線のトンネル工事が難航している。技術的に難しいのではない。静岡県の川勝平太知事が、「水問題」を理由にストップをかけているのだ。とっくに始まっているはずの工事が、1メートルも掘り進められないでいる理由は何なのか。JR東海の関係者によると、

「この南アルプストンネル(静岡工区)は、静岡県の山間部を11キロほど横切るだけですが、問題になったのは大井川の水源地を通ることでした。2013年の環境アセスメントでは、毎秒最大2トンの出水が予想され、河川減水の恐れが指摘されたのです。そこで、JR東海は流量を見ながら、掘削で減った分を大井川に戻す方向で静岡県と話し合っていました」

 翌年、工事計画は認可され、あとは本工事に取り掛かるだけだった。ところが、“ちゃぶ台返し”が起きる。川勝知事が、「まず、(湧水の)全量を戻すと明言するべきだ」と言い出したのだ。

「すでに、長野県側と山梨県側ではトンネル工事が始まっており、静岡工区だけが、取り残されてしまっています。困った会社は、昨年10月に“全量を戻す”と表明したのです」(同)

 これで一段落、と思ったら、さにあらず。今度は、

〈(湧水を流す)導水口がトンネルからかなり下流にあるため、その間で川枯れが起きる可能性がある〉

〈湧水は川と水温が違う。環境にどんな影響が出るか分からない〉

 と、静岡県側がさらなる難題を突き付けてきた。おまけに川勝知事からは「どうしても27年に開業したいなら、静岡をルートから外せばいい」と“脱線”発言も。単なるイチャモンにも聞こえるのだが、何をすれば工事を始められるのか。

 静岡の県政関係者が言う。

「川勝さんの本音は、閑古鳥が鳴く富士山静岡空港に東海道新幹線の新駅を作って欲しいということ。ここは新幹線が真下を通っており、駅が出来るとエスカレーターで上がれる。しかし、静岡駅と掛川駅の中間にあるため、列車の減速は避けられず全体の運行本数にも負の影響が出ます。JR東海としては、とても飲めない話」

 一説には、その工事費が約900億円。ベラボーな値段で「南アルプスの水」を売りつけられるJR東海に打開策はあるのか。

週刊新潮 2019年7月18日号掲載

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