中国人経営の不動産屋は法律を守る気がない 日本人の元従業員が語る“ブラックな実態”

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現代版蛇頭の暗躍

 中国人が日本に密入国するには、どうすればいいか。90年代は蛇頭(じゃとう)と呼ばれるブローカーに大枚をはたき、命懸けで海を渡ってくるケースが多かった。だが、現在ではそんな必要はない。政府が外国人の在留に大きく門戸を開いていることも手伝って、日本籍を持つ中国人が経営する会社に名目上雇ってもらえさえすれば、日本語が話せなくても、なんの専門性がなくても、日本の発展に寄与することがなくても、日本滞在に不可欠な査証(ビザ)を保証して“もらえる”――。また、そうした会社は、小金持ちの中国人が、500万円ほどを投じれば興すことができる。

 しかし、条件を満たさず、査証発給の保証を受けられないような中国人を雇うこと自体、裏があると思ったほうがよさそうだ。就労を装って虚偽書類を出して査証を取らせて“あげる”代わりに暴利を貪るビジネスだったり、実際に働いたとしても、劣悪な条件でタダ働きさせられることもある。すなわち、表面上合法的な会社経営者が現代の蛇頭になり得るのだ。

 宅地建物取引士(以下、宅建士)の資格を持つ窪塚陽介さん(仮名、58歳)は一時、そうした中国人経営の不動産屋で働いていた日本人だ。そのときの様子を「どこぞの国の会社なのかと思った」と話す。日本国内に確実に根を下ろしている中国人社会。以下の窪塚さんの証言を基に、その実情を審らかにしてみよう。

とある不動産会社

 私が働いていたのは、関西の地方都市にある会社です。この会社で働くようになったのは、中国人の元カノ経由で話が回ってきたからです。私が転職先を探しているって、どこかから聞きつけたみたいでしたね。年齢不問だというし。この年での就活は大変ですよ(笑)。社長は阿部直子(仮名、46歳)という女性です。中国人です。日本にはもう長いらしく名前こそ日本名を名乗っていますが、頭の中はバリバリの中国人マインドですよ。要は人のことはお構いなしで金儲けしか頭にないんです。

 従業員は、バイトを含め、中国人営業マンが常時20人前後でしょうか。日本人は私だけで、宅地建物取引業者として営業するために必要な「専任宅建士」も私1人だけ。宅地建物取引業法では業務に従事する者(従事者)5人につき専任宅建士1人の設置が義務付けられていて、中国人営業マンはバイトも含めて、皆、直接宅建取引をしているわけですから、明らかな法律違反なわけです。会社が役所に専任宅建士の申請をする際、行政書士は「従事者は5人で間違いないですね」と確認していましたから、もちろん社長も業法の規定は知っている。故意に知らんぷりを決めこみ、営業するのに一番肝心なところで人件費を削減しているんです。

 業務は中国人向け賃貸と売買の仲介と、そこから派生する投資物件の管理などが中心です。客は間違って入ってきた場合を除いて中国人だから、その点、営業マンは片言の日本語でもいいわけです。日本語の日常会話はそれなりの営業マンもいますが、なにぶん不動産に関する専門知識は乏しく、実務を遂行したり、取引先と商談を進めるには難しいレベルでした。

 そんな彼らの仕事の範囲は、主に中国人の客を取ってくることと、賃貸なら内見から手続き、引き渡しまで。売買なら、内見して買付証明を出して、あとは私が売手側とやり取りしたことをお客さんに伝えたり、面倒みるぐらいですかね。物件管理はオーナーと連絡を取るぐらい。それ以外の実務――物件調査や図面作成、ネット掲載の作業、見積・清算書の作成、マンション管理組合総会への代理出席、トラブルへの対応から問い合わせの電話応対――などは、基本的に私に集中します。あ、そうそう。休み明けに出社したら、私の机の上に求人広告会社の営業マンの名刺が置いてあったことも。「その応対も俺の仕事なんだ」って……(笑)。

 ただ、賃貸に限ってですが、宅建士の独占業務であるはずの重要事項説明書(以下、重説)の説明を、営業がやってくれるんですよ、ここの会社は。賃貸は扱う件数も多いですから彼らも手慣れたもので、日本人の保証人が同席するなどの場合以外、ほとんど私にはお呼びがかかりません。

 でも、いざ立ち会ったら立ち会ったで、結構怖い目に遭いますよ(笑)。重説は、物件の詳細や契約条件などの重要事項を契約する前に説明し、客は契約するかどうかを決める大切なもの。にもかかわらず、遅れて客の席に着くときには、契約の署名捺印が終わっていたりする。普通は逆なんです。それから、契約期限満了前の短期解約違約金の説明のところで中国人の客から文句を言われたことがあります。「私、1年後に帰国しますから、違約金は困ります」って。営業には「重説は契約書の前」「条件は物件を提案する際に確認」と口酸っぱく言ってきたつもりです。でも、そんなのどこ吹く風。「前もってするわけないだろう!」と怒鳴る営業もいましたよ。

 もちろん、働いていた中国人の皆が皆、そんな適当というばかりではありません。とくに売買仲介は専門性が高いから、素人にはハードルが高すぎる仕事です。それでも意欲的な中国人営業マンの中には、仕事を覚えようと挑戦する者がいて、自分とは関係のない打ち合わせでも、聞き耳を立てて勉強する人間もいました。やる気がある人間とは一緒に仕事を進めながら、ゆっくり仕事を覚えてくれればと思っていました。

 この会社の場合、賃貸は自分たちでやるけれども、それ以外の作業分担はとくに決めていません。報酬体系は社員もアルバイトは完全歩合制なんですけどね。完全歩合制の場合、営業がどこまでの範囲で仕事をするかによって歩合が異なりますが、彼らの取り分は一律50%。だからなのか、自分でできることでもなんでもふってくる者や、「専門的なことは宅建士がやるから、自分は専門知識がなくても金儲けできる」とはっきり言う者もいました。これ、感謝の気持ちでしょうか?(笑)。基本、彼らは客を連れてきて、内見や買付証明書を出すぐらいでいいんです。それ以外、余計なことはやらない。それは端から分かっていました。このあたりは中国人気質といえるかもしれません。むしろ、やらなくていいことをわざわざやるのは、将来は独立したいとか、自分なりの思惑があるからなんでしょう。

 経営者の立場からも、営業マンは余計な仕事はしないで、客だけ連れてくればいいというのが本音でしょう。だって、完全歩合制なのだから、基本給を払わなくて済むし、社保に入る必要もない。客だけどんどん連れてきて、あとの処理は、残業代もボーナスもない固定給の宅建士、つまり私にやらせておけば、社長の取り分は雪だるま式に増えていくから。だから、営業の数は多いほどいい。社員とバイトの求人広告は年中出していますよ。日本語が話せなくても、不動産の経験・知識がなくても、来るものは拒まずの姿勢。広告には「基本給保証」との記述もありますが、実際に基本給を保障されている者は誰もいない、とぼやく営業もいました。

 ちなみに、社長の支出は、事務所の維持経費、歩合給、売上に応じた報奨金、交通費、宅建士の給料など。業務の必要経費は営業マンと適宜分けていたかな。あとは気が向いたときに自分の憂さ晴らしをする社員旅行や社内での食事会ぐらいでしょうか。

 上りはどのぐらいだろう……謎ですね(笑)。賃貸は春夏年2回の留学生入学シーズン前は大忙しで、閑散期でも10件前後はありました。売買は月平均1~2件ぐらいでしょうか。仮に1800万円のマンションを仲介したとしても、最大で売主と買主の双方から満額手数料をもらって単純計算で120万円。営業と折半して60万円。売主が広告料を出していればもう少しいきます。まあ、同業他社とは手数料で競わなければいけないから、買い手から手数料を上限いっぱいもらえることも少ないですけどね。

 社長は会社からしっかり給料をもらっていましたし、マンション物件もいくつか持っていて、家賃収入もある。2000万円ぐらいの物件はキャッシュで買っていましたから、それなりに蓄えはあるようです。

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