大河「いだてん」、アベサダもショーケンも効果なし、クドカンドラマとして楽しむ方法

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大河と思うな

「これまで見続けていた人の間では、だんだん面白くなったと言われているんですけどね。そして、第25話(6月30日)より後編に入りました。阿部サダヲの早口の台詞は、この1話だけで前編の勘九郎の台詞量を超えたのではないかと思うほどでしたが、不思議とついていけましたし、NHKスタッフも慣れたのか落語と本編との切り替えもスムーズに。さらに双方がリンクするのは、クドカンの落語ドラマの名作『タイガー&ドラゴン』(TBS)のようです」(同・放送記者)

 IOC(国際オリンピック委員会)からアムステルダムオリンピックへの招待状が届いたが、渡航する費用がない。そこで動き出すのが阿部演じる新聞記者の田畑政治だ。田畑が直談判に乗り込んだのが、時の大蔵大臣・高橋是清。これを演じたのがショーケンである。

 そこには素のままのショーケンがいた。死後に出版された著書「ショーケン 最終章」(講談社)には、「いだてん」撮影についてこう書かれている。

〈私が演じるのは、その財政手腕が高く評価されながら一九三六年の「二・二六事件」で暗殺される政治家の高橋是清だ。
 NHKは『どこにもない国』での吉田茂の“特殊メイク”が成功したため、「ダルマさん」と呼ばれ、私とは似ても似つかぬ風貌の高橋是清に扮してもらいたかったようだ。しかし台本を読み、キャストを見て考えた。
 ちょっと待てよ。これは特殊メイクで高橋是清に似せて演じると、かえって浮いてしまうんじゃないか。
 吉田茂と違って高橋是清は、その名前は聞いたことがあっても、顔がすぐに浮かぶ日本人はあまりいないだろう。ビジュアル的にメジャーじゃない人物の顔にあえて似せる必要はない。むしろ周りから浮かないようにするほうがドラマにとっては大切だ。
「今回は自分のいつもの“生地”を生かしてやらせてください」〉

 第25話では最後に、ちょこっとだけショーケンが出演し、視聴率は8・6%。6~7%が続いていたことを思うと、これを弾みに上昇するかと思われた。

「結局、第26回(7月7日)は7・9%と、元の低視聴率に。この回では最初からショーケンが出演したのですが、亡くなってしまったことで大きく宣伝できなかったのもネックだったかもしれません。助成金を申し込む阿部を睨み付けるショーケンの目がよかった。著書にあるように、特殊メイクにしてしまったら、私たちは最後のショーケンを、ショーケンとして見られなかったかもしれない。無事に助成金は得られるわけですが、6万円という大金で、これが落語の『火焔太鼓』で大金を手にした夫婦の話とリンクするのも見事でした。さらにこの回ではショーケンよりも、日本人女性初の五輪メダリストの人見絹枝(菅原小春[27])が描かれ、こちらも神回と言われています」(同・放送記者)

 放送中から放送終了直後にかけて、「人見絹枝」はYahoo!リアルタイム検索ランキングの1位に。ちなみに演じた菅原小春はダンサーである。

〈なにかと叩かれまくってる番組だけど…叩きながら結局観れるやん?苦笑 この回は本当に良かった。号泣したよ…〉

〈「いだてん」菅原小春さんが素晴らしすぎて。うまく感想言えない。誰かが「演技を超えた何か」って書いてたけど、超えてる、超えてる。〉

「固定視聴者の中だけで盛り上がっているように見えるかもしれませんが、確実に『いだてん』は面白くなっていると思います。残念ながら視聴率には繋がっていませんが、それがクドカン作品の特徴とも言えます。クドカンドラマはどれも当たっているわけではありませんし、再放送で評価されるというパターンもある。『いだてん』もそうなる可能性があります。また、ショーケンは著書で、2・26事件で殺されるシーンにも注文をつけた、と書いています。どこまで撮影できたのかは不明ですが、彼が2・26事件を演じるのは、五社英雄監督の『226』(1989年公開)以来、30年ぶり。それを含めて楽しみです」(同・放送記者)

 後編ではクドカンドラマの常連・薬師丸ひろ子(55)も出演している。いよいよクドカンドラマらしくなってきた「いだてん」、大河ドラマなんて思ったらダメみたい。

週刊新潮WEB取材班

2019年7月14日掲載

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