日テレ「イッテQ」にBPOのお咎めなし、ならばフジ「ほこ×たて」はどうなの?

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「世界の果てまでイッテQ!」(日本テレビ)の「ヤラセ疑惑」に対し、7月5日、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会が結論(意見書)を公表した。

 曰く、〈放送倫理違反があった〉とヤラセを認める結論ではあるのだが、その内容はむしろ日テレに同情的で、〈完成度の高い「祭り」に出会えることを期待する〉などと復活を望む言葉で結んでいる。それゆえ、日テレも問題となった祭り企画の復活を宣言したのだ。

 テレビ業界からは、「ならば、かつてBPOに断罪された『ほこ×たて』(フジテレビ)は何だったのか……」との声が上がっている。

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 日曜夜のバラエティの王者「イッテQ」で、宮川大輔が世界各地の珍しい祭りを訪ねて挑戦する名物企画に、ヤラセがあったと報じられた問題への判決がようやく出た。それがBPOが発表した〈日本テレビ『謎とき冒険バラエティ 世界の果てまでイッテQ!』 2つの「祭り企画」に関する意見〉なのだが、これがどうにも煮え切らない。

 問題の「ラオス・橋祭り」(2018年5月20日放送)、「タイ・カリフラワー祭り」(17年2月12日放送)などを対象に、検証委員会は日テレのプロデューサー、総合演出、制作会社のプロデューサー、現地コーディネーターなど12人に対し聴き取りを行ったという。

 その上で、〈今回の2つの「祭り」は、番組のために現地で用意したものであった〉と現地で伝統的に行われている祭りはなかったことを認めながら、結論としては〈程度は重いとは言えないものの放送倫理違反があった〉という、執行猶予付き有罪判決のような中途半端なものだった。

 そればかりか「おわりに」と題して、委員会が「イッテQ」を視聴して楽しんだことを紹介。挙げ句に、〈「祭り企画」について日本テレビは、視聴者に自信を持って提供できる態勢を整えたのち再開したい意志があると聞く。(中略)完成度の高い「祭り」に出会えることを期待する。〉などと復活を望む言葉で結んでいるのだ。

 でっち上げの祭りであることを認めておきながら、なぜこんな結論になるのだろうか。

 上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)が解説する。

「平たく言うと、ヤラセを行ったのは現地のコーディネート会社だから、ということです。『こんな祭りがあるんですよ』という口車に乗せられた制作会社も、ましてや制作会社が撮ってきた番組を見て気づかなかった日テレも、お咎めなしというわけです。ただしBPOは、意見書では“ヤラセ”という言葉を使用していません。これに疑問を持った記者の方も少なくなかったようで、会見では『なぜ“ヤラセ”などの言葉を使わなかったのか』という質問が出ていましたね。これに対して、BPOの升味佐江子委員長代理は『“お約束”として視聴者が納得している演出には、誰も“ヤラセ”とは言わない』と答えています。でも、視聴者の皆さんは“お約束”として見ていたでしょうか。年に一度の海外の伝統ある祭りに、日本から宮川さんが参加して、挑戦し、頑張ったというドキュメント・バラエティを信じて見ていたわけです。それが伝統ある祭りでも何でもなかったということになれば、演出でも誇張でもなく、でっち上げ、ヤラセですよ。随分、BPOも寛容になりましたね。かつては、ヤラセの事実があれば、たとえ制作会社の撮った番組であっても〈重大な放送倫理違反があった〉となったはずですが」

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