高島忠夫さん夫妻の「老老介護」が社会に投じた一石

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 世の中には2種類の人間が存在する。忍び寄る危機を前に、目を塞(ふさ)いでその不都合な真実を見ないことにする「現実逃避型」と、それを受け止めた上でどうにかそこからの脱出を模索する「現実直視型」である。超高齢化に伴う対策で後手後手に回ってきた現代日本人は、さしずめ前者に属するのかもしれない。だがこの現状に、絵に描いたような、ある幸せな家族の「転落」が一石を投じていた。

 俳優の高島忠夫さん(享年88)の死、それは彼および家族の闘病の凄絶さを思い出させるものだった。高島邸の近隣住民曰く、

「ここ数年は高島さんだけでなく、奥さんも全く外に出てくる姿を見ませんでした。彼女も介護疲れからか、精神的に参っているらしいという話です」

 俳優として、そして司会者としても人気を博していた高島さん。妻は宝塚OGの寿美花代(すみはなよ)さん(87)で、息子の政宏氏(53)と政伸氏(52)も俳優という芸能一家であり、「おしどり夫婦」「幸せ一家」の代名詞的存在だと思われてきた。

 そんな高島ファミリーに不幸の影が忍び寄ってきたのは1998年。高島さんがうつ病を発症したのだ。以後は持病の糖尿病に加え、パーキンソン病、不整脈と、次々に病が彼を襲い、2008年を境に、高島さんが表舞台に出てくることはなくなっていた。

 しかし13年、彼は再び「脚光」を浴びる。ドキュメンタリー「真実の高島ファミリー」が放送され、高島夫妻の老老介護の様子が、実に詳細かつ生々しく紹介されたのである。

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