「セブン」「ローソン」食品ロス対策への疑問 なぜ現金値引きではなくポイント還元?

ビジネス 企業・業界

  • ブックマーク

Advertisement

薄利多売化の懸念

 その理由として渡辺氏は「ポイント還元という値引き具合のわかりにくさ」を挙げる。

「ダイレクトな値引きを行うと何が起こるか。店舗同士の苛烈な競争です。セブンやファミマが、ある場所に密集しているという光景を見たことがあると思います。これはドミナント戦略という、一定の地域に集中する出店戦略によるものですが、今は値引きをしている店舗が極めて少ないため、定価販売を前提とした密集具合で出店し、商品価格に関してはバランスを保って営業することができています。これが文字通りの値引きとなると、『あそこのセブンよりこっちのセブンのほうが安い』と、同じブランド間でも店舗の競争を招いてしまう。ゆくゆくは値引き合戦となり、ひいてはコンビニが薄利多売の商売になってしまうわけです。ポイント還元という本部側が管理できるワンクッションを挟むことで、これを防ぐ狙いはあるでしょうね」

 ポイントは、折々のキャンペーンや利用するサービスによって、1ポイントの価値が上下する。そこを逆手にとった戦略ともいえるだろうか。

「そもそも食品ロスに動き始めた背景に、24時間営業問題でコンビニのイメージが下がったこともあるはず。今回の取り組み、感度の高い人たちは、『ポイント還元なんておかしいじゃないか』と考えるはず。ですが、『ポイント還元でも割引になるならそれでいいじゃないか』と考える人も少なくないはず。とにかく、ニュースを見て『食品ロスに取り組むのか、良くやっているじゃない』と思ってもらうことで、イメージ回復につながることも重要なはずです」(同・渡辺氏)

 とはいえ、コンビニの未来を鑑みれば、今回の対策は甘いとも指摘する。

「ポイント還元ですが、セブン、ローソンともに値引きは5%といわれていますよね。でもいま、コンビニのライバルは『まいばすけっと』『ピアゴ』などのミニスーパーやスーパーです。こちらは5%といわず、弁当や総菜を3割引や半額で値引きする。これらに対抗するには、5%では無理でしょう。本部負担のポイント還元と店舗負担の売価の値引きを併用して、さらに値引き率を高めるのが、現実的な今後の戦い方ではないかと思います。もちろん、見切り販売と値引きは違うとはいえ、それでも先の競争激化の懸念は避けられないわけですが……」(同・渡辺氏)

 ちなみにファミマはファミマで、恵方巻きやクリスマスケーキなどの季節商品を完全予約制にし、やはり食品ロス問題に取り組む。コンビニの未来は、果たして。

週刊新潮WEB取材班

2019年5月23日掲載

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。