韓国へのメッセージの送り方(石田純一)

韓国・北朝鮮 2019年4月28日掲載

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石田純一の「これだけ言わせて!」 第30回

 個人的にはきわめて残念というしかない。被災地の方々の復興への思いを考えると心が痛む。

 東京電力福島第一原発事故が起きてから、韓国は被災地からの水産物の輸入規制をだんだん強化して、青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の8県で水揚げ、または加工された水産物は全面的に輸入禁止にしている。日本政府はこれを必要以上に差別的だとして世界貿易機関(WTO)に提訴し、一審に当たる紛争処理小委員会は、日本の主張を全面的に認めた。ところが、ご存じの方も多いと思うが、このたび上級委員会は一転して韓国側の主張を認め、日本は逆転敗訴してしまった。WTOは二審制なので、これで判決は確定してしまったのだ。

 ただ、敗訴を受けての日本側の反応にも、少し思うところがあった。会見した吉川貴盛農林水産大臣は、「日本の主張が受け入れられなかったのは遺憾だ」と言って、引き続き韓国などに輸入規制の撤廃を求める姿勢を示したけど、ちょっと高圧的なところがイヤだなぁ、と。また、菅義緯官房長官は「わが国が敗訴したとの指摘は当たらない」と言ったけど、この問題を「勝った」「負けた」だけで判断するのもどうかなぁ、と。

 この8県の水産物が科学的に検証しても危険とはいえないことは、今回、上級委員会も認めている。しかし、いくら科学的に問題なくても、食べる気になるかどうかは主観に委ねられるという点に、問題の難しさがあると思うのだ。

 韓国の禁輸について、WTOは一審では「必要以上に厳しい」と断じたが、二審では「主張も一応は理解できる」と言っている。食品を口にする際、安全と感じられるか、安心できるか、という点に主観が影響する以上、各国に委ねるしかない。WTOもそう判断したのだろう。それに対して、「禁輸をやめて輸入しなさい」と迫るのは、少し乱暴だという気がする。紛争解決機関に裁定を委ね、結論が出てしまった以上、韓国に「規制撤廃を求める」という強い姿勢で迫るより、もっと真摯な姿勢を示したほうがいいと思うのだ。

 ちなみに、日本の被災地からの水産物輸入を規制している国は、以前は54カ国あったのが23カ国に半減している。もっとも、まだ23カ国もあるという言い方もできる。放射性物質の数値についても隠さず公開しつつ、理解してもらえるように地道に説明していくしかないだろう。

 それにしても、福島県の漁獲量や水産物の売り上げは、いまも原発事故が起きる以前の20%しかない。漁業関係者や水産物加工業者のことを思うと、ほんとうに心が痛む。だからこそ、政治家の高圧的なメッセージは避けるべきなのだ。

 もちろん、韓国の日ごろのけんか腰の態度に接していれば、日本側も自然とそうなってしまうのは、理解できないわけではない。しかし、そういう態度はおたがい様だといっていては、物事は前に進まない。

 禁輸を解いてもらうのも外交だ。高圧的な態度では相手の懐を開けないことくらい、政府の面々だったら百も承知のはずなのに。「遺憾だ」といい、「勝った」「負けだ」だけで判断するのは、政府側のプライドに根差している気がするが、本当に困っているのは漁業や水産業に携わっている人たちだ。彼らが不在のままメッセージを送るのは、やめようじゃないか。

石田純一(いしだ・じゅんいち)
1954年生まれ。東京都出身。ドラマ・バラエティを中心に幅広く活動中。妻でプロゴルファーの東尾理子さんとの間には、12年に誕生した理汰郎くんと2人の女児がいる。元プロ野球選手の東尾修さんは義父にあたる。