横浜「トゥクトゥク」物語 老舗玩具店主が3輪バイクで“移動式写真屋さん”を始めるまで

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取材・文/大寺明(ライター)

 神奈川県・横浜の赤レンガ倉庫前に、ひときわ目を引く「トゥクトゥク」が停まっているのを見かけたことはないだろうか。東南アジア諸国では庶民の足としておなじみの3輪タクシーが、なぜ横浜に……? 運転手に話を聞けば、知られざる波乱万丈のストーリーがあった。

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 先に答えを言ってしまうと、横浜のトゥクトゥクはタクシーとしてではなく、「フォトクルージング」という観光客向けのサービスとして営業している。横浜中華街やコスモワールドといった横浜の観光スポットをトゥクトゥクでクルージングし、その際にインスタントカメラで撮った写真を販売する、いわば「移動式写真屋さん」というものだ。

「日本の道路交通法では、トゥクトゥクを走らせることはできても、乗車運賃を取ってお客さんを乗せることができません。そこで考えたのが『フォトクルージング』でした」

 そう語るのは、ドライバーの足立吉雄さん(47)。有限会社ネオスタイルラボの代表として、ひとりで「YOKOHAMA TUKx2」を運営している。走り出して、8カ月になる。
 
「トゥクトゥクの魅力は、風を感じられることです。これからの季節はフルオープンにして走るので、景色もよく見えるし、風が最高に気持ちいいですよ。私は横浜生まれ横浜育ちの人間なので、横浜に来た人には、横浜の景色を満喫してほしいし、横浜の風を感じてほしい。空には遊覧ヘリがあって、海にはクルージング船があるけど、陸には観光用の乗り物があまりないですよね。今はまだ『なんだこりゃ?』という反応が多いですけど、認知度さえ上がれば絶対に流行るはずだと思ってます」

 お値段は、30分6千円や1時間1万2千円などの料金設定。こう聞くと「高い」と思うかもしれないが、トゥクトゥクの座席には最大6人が座れ、何人座ってもこのお値段。割り勘にすれば手ごろな値段で横浜観光が楽しめ、さらには写真で思い出も作れちゃう、と足立さんは胸を張る。

 昨年、開業したトゥクトゥクサービスだが、実は足立さん、昭和初期の創業という横浜の老舗オモチャ屋さん「足立玩具店」の跡取り息子だった。

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