山崎豊子ブーム再燃! 「白い巨塔」「二つの祖国」が相次いで映像化するワケ

芸能2019年3月23日掲載

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 作家・山崎豊子が89歳で亡くなってから5年半。すでに『白い巨塔』のコミック雑誌での連載が始まり、さらにこの3月と5月に、相次いで山崎作品がドラマ化される。今、なぜ再び「山崎豊子」なのか。人気の秘密を探った。

「前回の山崎ブームはちょうど10年前。『沈まぬ太陽』が渡辺謙主演で初映画化されて、これは日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞しています。『不毛地帯』が唐沢寿明の主演で半年間にわたりテレビで放映されたのもこの年。さらに『運命の人』が刊行され、山崎さんは毎日出版文化賞を受賞しています」(遺作『約束の海』の担当編集者)

 その年一年間で『沈まぬ太陽』は118万7000部を重版し、現在までに累計700万部の大ベストセラーとなっている。

 それから10年。この3月に「テレビ東京開局55周年特別企画」と冠して放映されるのは、『二つの祖国』。戦中戦後の日系二世の苦難を描いた作品だが、この作品も『山河燃ゆ』のタイトルで1984年、NHK大河ドラマとなっている。松本幸四郎(現・白鸚)で好評を博した主人公・天羽賢治役を今回は小栗旬が演じる。

 一方、「テレビ朝日開局60周年記念」として、5月放映が決まっているのが『白い巨塔』。こちらは「V6」の岡田准一が医師・財前五郎役に挑戦する。岡田が「原作と過去の作品をリスペクトしながらも全く別のものを作っている感覚があるので、新しい現代の『白い巨塔』を楽しんでもらえると思う」とコメント(テレビ朝日HP)している通り、この作品もリバイバル。田宮二郎(78~79年)、唐沢寿明(03~04年)が財前を演じた。

『二つの祖国』は1983年刊行、『白い巨塔』に至っては完結後、実に半世紀が経っている。どうして作品が古びないのか? 『白い巨塔』について次のように分析するのは、前出の担当編集者である。

「医学はこの50年でとても進歩しています。それなのに医者、医学界はまったく進歩していないということです。山崎先生は身体が弱く、しょっちゅう病院に入院していました。それで院内の現実の人間関係に興味をもったと話していた。『でも大学病院の腐敗を暴こうという気持ちはない。私が書きたかったのは人間ドラマ』と、生前おっしゃっていましたね。『社会派と呼ばれることが多いのですが、私はイデオロギーで書くことはありません』とも」

 つまり人間は変わらない、ということか。今でも医療事件はよくあるし、病院に行けば、財前、里見、東ら『白い巨塔』ばりの登場人物を目にすることができるのだ。

 ただし設定は変更している。同作で財前は、食道がんを専門とする天才外科医として描かれている。当時、食道がんは「生きるか死ぬか」という厄介な病だった。が、50年が経ち状況は変わっている。連載中のコミックでは膵臓がんの専門家、ドラマでは「腹腔鏡のスペシャリスト」として財前は登場する。どちらも舞台は現代。現在、手術が難しいがんは「肝胆膵」、つまり肝臓、胆嚢、膵臓の各部位のがんだという。

 さらに次のように言葉を補うのは、山崎作品の映像化に関わってきた関係者。

「95年にNHKで放送されたのが、上川隆也主演の『大地の子』でした。NHK内部では、その前後に入局した局員を“大地の子世代”と呼んでいる。つまりあの作品をテレビで観て、NHKに入りたいと希望した若者たちがいた。そうした若者たちが各局にいて今では責任ある立場になり、自分の手で山崎作品を映像化したいと考えるのです。ドラマ屋になったからには、一生に一度はやってみたいと。まさに男子の本懐です」

デイリー新潮編集部