「いだてん」喫煙シーンはNG? テレビ業界「たばこ」と「酒」の奇妙な逆転現象

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転換期は木村拓哉?

 意外に思われるかもしれないが、検索エンジンで「たばこ 映画」と検索すれば、名場面を振り返る記事が目立つ。ツイッターも同じ傾向だ。しかし「たばこ テレビ」に変えると、ネット上の論調は一転してしまう。

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 たばことテレビといえば、公益社団法人「受動喫煙撲滅機構」が2月、NHKに「大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」に受動喫煙のシーンが多い」と抗議。番組内での謝罪を求めたことが話題になった。

 とはいえ、世論も全面的に賛同したわけではない。例えば、抗議を報じた朝日新聞(電子版)の記事は、「いだてんに『受動喫煙シーンやめて』 機構指摘、反発も」(3月3日)と、機構の姿勢に批判的な声も踏まえた見出しを付けた。

 嫌煙権を主張する人々と、禁煙ファシズムを憂慮する人々――今は両派がせめぎ合っている時代なのかもしれないが、テレビ業界の本音は、どんなものなのだろうか。ベテランの制作関係者に話を聞いた。

「たまにアナログ放送時代のドラマが再放送されているのを見ることがありますが、私のような制作側の人間でも、昔は喫煙シーンが多かったことに衝撃を受けますね。禁煙派と反禁煙派がせめぎ合っているどころか、今は喫煙者に完全な逆風というのが実感です。テレビにおける喫煙シーンが最初に問題になったのは90年代後半、木村拓哉さんに対して批判が起こったことが原点ではないでしょうか」(民放キー局の番組制作関係者)

 データベースで調べてみると、例えば産経新聞は、97年5月、“ワースト・スモーカー・コンテスト”の結果が発表されたと報じている。「タバコ問題首都圏協議会」という団体が「ドラマ中に喫煙シーンが多い」と、木村拓哉をワースト3位に選出したというのが記事の内容だ。ちなみにワースト1位は、当時の橋本龍太郎首相(故人)だった。

 木村のテレビドラマ出演歴を調べてみると、この時期の主な出演作は「ロングバケーション」(フジテレビ系列:96年4月~6月)、「協奏曲」(TBS系列:96年10月~12月)、「ギフト」(フジテレビ系列:97年4月~6月)という顔ぶれになった。

「昔はドラマだけでなくトーク番組やインタビューでも、たばこを吸っている芸能人や政財界の要人が珍しくありませんでした。もちろん現在は皆無と言っていいでしょう。バラエティ番組で、たばこを吸う場面を最後まで流していたのは、『さんまのまんま』(関西テレビ/フジテレビ系列)でしょう。今でも、ごく僅かに、電子たばこを吸うタレントが画面に映ることがありますが、視聴者ウケは良くないと思います」(同・制作関係者)

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