「がん検診」がむしろリスクに? 年齢上限がないのは日本とドイツだけだった

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年齢・部位別に検証! 間違いだらけの「がん検診」(1/3)

「備えあれば憂いなし」とは、天変地異のみならず忌まわしい病にも打ち克つ至言である。が、こと「がん検診」においては、しばしば相応しくない“備え”が展開されている。日本人の2人に1人が罹患するという「国民病」を退けるべく、その最新常識をお届けする。

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 大病とはとんと縁遠い人でも、地域の自治体から届く「検診のお知らせ」には見覚えがあることだろう。

 1981年以降、がんは日本人の死因で不動のトップを占めている。現在でも年間およそ37万人が命を落としているのだから、いわば我々の天敵である。

 そんな魔物から身を守ろうと、市区町村や事業所などでは目下、公的な予防対策であるがん検診が実施されている。旗振り役の厚労省は、死亡率や罹患率が高い部位において、早期治療の効果が高く有効性が確立された検査方法での「対策型検診」を推奨しているわけだ。

 それは「肺」「大腸」「胃」「子宮頸」「乳」の5種で、対象年齢や受診間隔については掲載の表の通り、同省が指針を定めている。

 ところが、ここには受診を推奨する「開始」年齢だけが示され、その「上限」についての記載はない。

 日本消化器がん検診学会の渋谷大助理事長が言う。

「高齢者の場合、たとえば胃がんのX線検診ではバリウムの誤嚥によって、まれに呼吸困難や肺炎が引き起こされたり、あるいはバリウムが固まって腸に穴があくなど『偶発症』のリスクがあります。また診察台からの転倒も増えていきます。それでも、精密検査で実際に胃がんが見つかる人は受診者の2~3%程度。残りの人にとっては、大きな精神的、金銭的負担がかかるだけなのです」

 こうした「不利益」は、他の部位の検診でもあるといい、

「大腸がん検診では、初めに便の潜血検査を行います。これは問題ありませんが、異常が見つかれば内視鏡を用いた精密検査が必要となり、お腹を空にするため2リットルほどの腸管洗浄液を摂取します。とりわけ高齢者や、過去に盲腸などの手術をして腸に癒着のある方は、この時に腹痛や吐き気を催したり、憩室など腸の弱い部分に突然圧力がかかって穴があいたり、内視鏡の操作で腸に傷がつくリスクが高くなるのです」(同)

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