ZOZO前澤、ホリエモン、べゾス、マスク…男はなぜ成功すると「宇宙」を目指すのか

ビジネス2019年2月18日掲載

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 ソ連が世界で初めて有人宇宙飛行を成功させたのが1961年。それからわずか8年後、アームストロング船長率いるアポロ11号が月に着陸した。この偉業を目撃した当時の人々が、いつか一般人でも宇宙旅行に行ける日が来ると信じても、不思議ではないだろう。

 しかし1972年のアポロ17号を最後に、人類は月に降り立っていない。それどころか地球低軌道上にある国際宇宙センターより先には、人類を送り込めていないのである。この50年で科学技術は飛躍的に進歩し、太陽系の端まで探査機を送るという偉業まで成し遂げたことを考えると、有人宇宙飛行が停滞していることは否めない。

イーロン・マスクとジェフ・ベゾスの参入

 今後も人類が宇宙飛行を楽しむ日はやってこないのだろうか。どうやらその心配はなさそうだ。21世紀に入り、「火星に移住する」「宇宙を人類の生活圏にする」と公言する人物が現れたからだ。ひとりはペイパルやテスラの創業者として有名なイーロン・マスク。もうひとりはアマゾンを世界一の企業にしたジェフ・ベゾスである。

 じつはこのふたりの参入によって、宇宙産業は今、足元から変わりつつある。かつてのイメージとはまったく異なる宇宙開発の現場を描いた『宇宙の覇者 ベゾスvsマスク』から、その内容を見てみよう(以下、引用部は同書より)。

 イーロン・マスクは2002年にスペースXを設立。ジェフ・ベゾスも2000年にひっそりとブルーオリジンを立ち上げた。宇宙事業にチャレンジした民間企業はこれまでにもあったが、すべて失敗に終わってきた。当然、マスクやベゾスを見る目も冷ややかだった。それでも彼らには勝算があった。マスクは語る。

〈ロケットの開発の歴史を振り返ると、あまり成功してきたとはいえません。いや、成功は一度もなかったともいえます。成功を、コストや信頼性の面で大きな進歩を遂げることだと定義するならです〉

 ベゾスも同じことを考えていた。つまり2人が目指したのは、ロケットの再利用である。ロケットの1段目はこれまで何十年も、衛星や宇宙船などのペイロード(搭載物)を宇宙まで運んだあとは、海に没したままにされていた。マスクとベゾスにはこれがとんでもない無駄遣いに思えた。まるでニューヨークからロサンゼルスへのフライトのたびに、飛行機を捨てるようなものだ、と。

 ロケットを使いまわすことができれば、宇宙開発のコストは劇的に下がる。そして2015年末、ついにスペースXとブルーオリジンが、立て続けにその目標を達成する。

〈宇宙時代の幕開けから約50年間、宇宙空間まで達したロケットが地上に垂直に着陸したことは一度もなかった。それが今、ひと月足らずで2回、行なわれた〉

〈さらに特筆すべきは、この着陸――NASA(米航空宇宙局)にもできなかった偉業――が国ではなく、民間企業2社によって成し遂げられたことだ〉

〈今、ロケットは上に向かって飛ぶだけでなく、下に向かって戻り、目標地点に正確に着陸できることを証明してみせた。数十年来薄れていた有人宇宙飛行への人々の関心が、これによってふたたび呼び覚まされた〉

 実際、マスクのロケット「ファルコン9」の着陸シーンは圧巻だった。高層ビルに匹敵する高さのロケットが垂直着陸する姿は、宇宙ファンの心を捉え、またたくまにYouTubeの人気動画になった。

 スペースXはすでに国際宇宙センターへの物資の運搬をNASAから請け負うようになり、今年夏までに有人飛行実験を行なう。これがうまくいけば、年末から国際宇宙ステーションに滞在予定の野口聡一氏が利用する可能性もあるという。

インターネットの次は「宇宙」

 現在、世界中で次々と宇宙ベンチャーが生まれている。スペースXやブルーオリジンのように大型ロケットの打ち上げを狙う企業もあれば、ロケットラボのように衛星用の小型ロケットに特化した企業もある。衛星軌道上のスペースデブリ除去を掲げる企業もあれば、民間人への宇宙旅行提供を目指すヴァージン・アトランティックのような企業ある。もちろん衛星開発も盛んだ。さらに先を見据えて、惑星資源探査や宇宙ホテル開発をもくろむ企業もある。

 日本ではZOZO社長の前澤友作氏がスペースXのロケットで月旅行に行く計画を発表して注目を集めたが、宇宙ビジネスへの参入も目立つ。起業家の堀江貴文氏は民間ロケットの開発に力を入れているし、山田進太郎氏が率いるメルカリも先月、宇宙事業参入を表明した。

 アメリカでは航空宇宙工学科の志願者が急増し、かつてない活況をみせているという。ベゾスは宇宙産業で、インターネットの世界と同じことが起きると予測する。

〈わたしがブルーオリジンを通じて成し遂げたいと思っているのは、宇宙にインフラを築くことなんです。インフラがあれば、爆発的な起業の増加を促せるでしょう。この21年間、わたしがインターネットの世界で目にしてきたのと同じようにです〉

 人類が月へ到達してから50年。国から民間へと主役をかえつつ、宇宙開発はさらなる盛り上がりを見せそうだ。人類がふたたび月に行く日はそう遠くないかもしれない。

デイリー新潮編集部