「意識高い系」はもう古い? アップル成功を支えた「意識低い系マーケティング」

ビジネス2019年2月1月掲載

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 平成が終わりに近づいたことで、テレビ、新聞、雑誌がこぞってこの時代を振り返っている。大災害や大事件などを除いて、この間、一般家庭に起きた大きな変革は間違いなく、パソコン(またはスマホ)の普及だろう。

 平成が始まった頃、パソコンはまだ家庭にあるものではなかった。スマホにいたっては影も形もない。

 もちろん企業レベルでは活用が始まっていたが、それもかなり使い勝手の悪いものだった。一般的にはウィンドウズ95以降、爆発的に広まったとされている。さらにこの流れを加速させたのが、アップルの数々の製品だろう。

 アップルの革新性については多くの分析がすでになされているが、盲点になっているのは、その「意識の低さだ」と指摘するのはライターの小口覺(さとる)氏。小口氏は新著『ちょいバカ戦略 意識低い系マーケティングのすすめ』の中で、「意識低い系マーケティング」こそが、アップルの成功の秘訣だった、と解説している。

「意識の高さ」ではなくて「低さ」というのは、アップルのイメージとはかけ離れているようにも感じられるだろうが、どういうことなのか。その真意を聞いてみた。

「製品の革新性や高いデザイン性から、アップルは『意識の高さ』で成功したように思われるかもしれません。

 でも、冷静に昔のことを振り返ってみてください。中年以上の方は覚えていらっしゃるとおもうのですが、昔のパソコンはものすごく面倒くさい機械だったのです。いちいち命令(コマンド)を入力しなければいけない。たとえば、ファイルひとつ消すのだって、ゴミ箱なんてなくて、DELと打ち込んでいたのです。

 これを画面上のアイコンやボタンの操作でできるようにしたのが、アップル社のマッキントッシュでした。実はこの技術は同社のオリジナルとはいいがたいのですが、ともあれ高いスキルが必要だったパソコンを、すごく『わかりやすい』機械に変えたのです。

 この『わかりやすさ』は、実は当時の専門家にはちょっとバカにされることもありました。オモチャ扱いされることすらあったようです。

 つまり、当時の『意識高い』人にとっては必ずしも歓迎すべき存在ではなかったのです」

 ある種の分野に詳しい人、「意識高い人」がわかりやすいモノをバカにする傾向はいつでも見られる。『ちょいバカ戦略』の中では、たとえば「洋楽通」がJ-POPやメジャーな音楽をバカにするのもその例として取り上げられている。

「知識やスキルが高い人は、どうしても『わかる人にわかればいい』という気持ちになりがちです。でも、これでは一般には広まりません。

『わかりやすいほうがいい』『使いやすいほうがいい』といった視点を持つ人がいて、初めて大衆に広がるのです。

 アップルの創始者、スティーブ・ジョブズも早くからコンピュータに着目していたのですから、当時としては先端の『意識高い系』だったでしょう。

 しかし、彼は上から目線ではなく、誰もが使えるコンピュータを作ろうとした。

 アップル社のヒット作を見ると、先端商品であっても、下から目線が取り入れられていることがよくわかります。

 それまではボタンが多くてややこしかったミュージックプレイヤーを、ホイールだけで操作できるようにしたiPodもそうです。iPhoneも同様でしょう」

 もちろん、「本物のバカ」「完全なバカ」ではどうしようもないが、ムダに意識が高いのは考えモノのようだ。

 小口氏は同書の中で「ヒット商品に共通の要素はちょいバカ戦略だ」と分析している。

デイリー新潮編集部