NHKが放置する中核子会社の「東京五輪事業」赤字付け替え疑惑

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約1300万円の「実態なき報酬」

 下請けの悲哀を味わわされたこの社長氏が「例えば」として続ける。

「15年10月頃のことでした。GMSの担当者から、『みずほ銀行は20年の東京五輪のスポンサーだから、彼らに事業を提案するためのプレゼン資料を作ってほしい』と依頼され、やはり下請けとして私どもが資料を作成しました」

 そのプレゼン資料を見てみると、

〈企画A案 障がい者スポーツセミナー支援展開「パラリンピアン・サポートキャラバン」〉

〈企画B案 5年間密着ドキュメンタリームービー「オリンピックが育む子供たちの記録」〉

 などと記されている。お世辞にも「エッジ」が利いた企画とは到底思えない上に、そもそも企画書は10枚程度のもので、誰がどう見ても練られたプレゼン資料とは言い難い。それもそのはずで、

「一夜漬けとまでは言いませんが、徹底的にデータを調べあげた上で作ったわけでもなく、アイディアの羅列といったようなものでしたからね。SSSが正式に公開された暁に、みずほに広告主になってもらえたら好都合。またSSSにみずほが付いているとの印象を与えられれば、GMSの社内でもSSSへの理解が深まるので、平たく言えば、あくまでみずほとの関係を強化するための『入口』としてのプレゼン資料だと聞かされて作ったものです。SSSが上手くいくならばと、サービスのような気持ちでやった仕事でした。プレゼン内容はSSSとは関係ありません。これを持って、1度だけみずほとの打ち合わせに参加しましたが、この程度の仕事だったにも拘(かかわ)らず、GMSから計864万円が振り込まれました。自分で作っておいて何ですが、みずほに持っていったプレゼン資料は、どう吹っかけても50万円がいいところです」(同)

 差し引き800万円超が「実態なき報酬」というわけだが、

「GMSの担当者から、『この支払いにはSSSの経費も含まれていますから』との説明を受け、納得しました。さらに追加で翌16年、『何か形にしないとSSSの経費が払えないから』と、みずほオリンピックプロジェクト用の新たなプレゼン資料を作るよう言われ、また作成しました。これも50万円もらえれば儲けものというものでしたが、432万円もGMSから振り込まれてきました」(同)

 とどのつまりこういうことだ。GMS内で「問題視」され始めていたSSS事業の経費を、その名目のままでは下請けの制作会社に払うのは難しい。そこで、みずほオリンピックプロジェクト名目に付け替え、実質最高でも計100万円の仕事に対して、864万プラス432万円、計1296万円も制作会社側に支払った――。そんな疑惑を抱えながら、結局、SSS事業は16年12月に、採算が取れないとして頓挫した。

「GMS内部の人から、SSSの赤字は約1億円に達したと聞いています。GMSはこの赤字を糊塗するために、他の事業名目に付け替え、紛れ込ませたんだと思います。GMSと話しても埒が明かないと考え、今年の10月末、一連の事態をNHK本体に文書で問い合わせましたが、今に至るもNHK本体からの連絡はありません」(同)

(2)へつづく

週刊新潮 2018年12月20日号掲載

特集「チコちゃんに叱られる! 『NHK』が放置する中核子会社の『東京五輪事業』赤字付け替え疑惑」より

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