「稀勢の里」退場の九州場所 空席が目立っても「満員御礼」の猫だまし

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“縁起物だから”

 相撲協会に聞くと、

「チケットの8~9割が売れていれば、『満員御礼』を出しています。そこに厳密な取り決めはありません」

 しかし、これ、例えば、テストで88点だったのに、「100点みたいなものだよ!」と言い張る子どものようなもの。親が聞いたら、苦笑いか、頭を引っぱたきたくなるのではないか。

「ここ数年、協会は、おおよそ8割に達していれば、『満員』ということにして、関係者に10円入りの『大入袋』を出しています」

 と言うのは、ベテランの相撲ライター。

「酷い時は7割5分で垂れ幕を出した例もありますから、実に好い加減。彼らは“あれは縁起物だから”と言い訳をしていますが、本音は、客が入っている、という雰囲気を出しておけば、時の幹部が『不人気』の咎を免れることが出来るからでしょう」

 要は、自己保身のための目くらまし。立ち合いで、眼前で手を叩いて相手の目をつむらせる「猫だまし」みたいなものなのだ。

「昔はもっと厳密でした」

 と、先のライターは続ける。

「若貴時代などは、完売か、それに限りなく近い数字でないと、満員御礼は出さなかった。が、その後、ブームが翳りを見せてくるに連れ、時々の理事長が、9割5分以上、続いて9割以上など、勝手に解釈を変える“禁じ手”を出すようになったんです」

 何とも情けない限りだが、先の中澤氏も嘆息して言う。

「今場所は、相撲の内容も悪く、勝負が付くまで10秒もかからない取組ばかり。目先の勝ち負けを争う寸劇を見せられているようなものです。それなのに、『満員御礼』で誤魔化していては、中身の充実に目を向ける余地はないですね」

 必要なのは、裸一貫からの出直しである。

週刊新潮 2018年11月29日号掲載

ワイド特集「秋風吹いて同床異夢」より

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