日本代表・不動の1トップ「大迫」に挑む「杉本健勇」、キルギス戦で露呈した課題

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杉本が大迫より評価された時期も

 ベネズエラ戦後の大迫は「岳(柴崎)にしろ、航(遠藤)にしろ、いい縦パスを入れてくれる選手がいる。そこから先はあまり考えずにプレーしている」と話していたが、大迫は前線で張るだけでなく、マーカーからスッと離れて自陣に戻る動きでフリーとなりつつ、しっかり止まって味方からのパスを引き出していた。

 対する杉本は前線でマーカーと駆け引きをしつつ、自陣に戻ることはせず、絶えず動き続けていた。動き続けていると、パスの出し手は足下なのかスペースなのか判断が難しい。そして前線に張り付いているため、記者席から俯瞰するとボール保持者と杉本の間には数多くのキルギスの選手がいて、ほとんどパスコースがない。ボール保持者の視界に杉本は入って来られないのだ。

 杉本自身は「前半は相手も真ん中が多かったので、なかなか(ゴール前に)は入れなかった。今日のゲーム展開では引くより前でガマンしよう。前で勝負しようと思った」と試合を振り返った。大迫の座を脅かすにはゴールという結果を残したかったのだろうが、その意識がキルギス戦ではマイナスに作用したのかもしれない。

 大迫と杉本は、ともに12年ロンドン五輪の予選を戦ったチームメイトだった。しかし大迫は、オールラウンドプレーヤーであり、闘志を前面に出して戦うタイプの選手ではない。このためロンドン五輪のメンバーからは落ち、ファイタータイプの杉本がロンドン行きの切符をつかんだ。あれから6年、大迫は初のW杯である14年ブラジル大会では失意を味わったが、4年後のロシアでは初戦のコロンビア戦で決勝点を決めるなど海外移籍の成果を発揮した。

 一方の杉本は日本代表のボーダーラインにとどまっている。大迫は代えのきかないエースであるが、彼一人に頼っていては危険だし、ケガなど万が一の場合に備えてバックアッパーは必要だ。杉本のさらなる成長は森保ジャパンにとっても急務であるだけに、攻撃陣の4人のセットは「力の差はあると思うが、これからの練習で選択肢を持たせてあげたい。これから伸びていく選手にどう働きかけていくか。それが自分の責任でもあり課題でもある」という森保監督の言葉に期待したい。(取材・文 六川亨)

六川亨
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。『サッカーダイジェスト』の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後『CALCIO2002』、『プレミアシップマガジン』、『サッカーズ』の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

週刊新潮WEB取材班

2018年11月22日掲載

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