最下位タイガースを背負う特効薬 “猛虎の要”矢野新監督の覚悟

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「まず指揮官の交代です」

 今年のノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑京都大特別教授は大の阪神ファンで知られるが、そんな教授がテレビ出演した際、低迷する虎の“特効薬”を問われて、こう断じた。

「思えば、あの発言で六甲おろしの風向きが“金本おろし”に変わったかも」

 と在阪スポーツ紙デスクが笑う。

 金本知憲監督は、最下位の責任をとって自ら辞めた形になっているが、

「実際は次期オーナーに就任する藤原崇起(たかおき)阪神電鉄会長の解任指令。金本続投で話を進めていたフロントには青天の霹靂でした」

 どのチームも来季体制を固めている時期である。解任するにしても遅すぎだ。外部招聘は勿論、岡田彰布元監督、掛布雅之前2軍監督を招くにも、条件面やコーチ人事を一から決める時間はない。つまり、誰がいいと選べる状況になかった。

「結局、来季1軍ヘッドコーチに異動する予定だった矢野燿大(あきひろ)2軍監督(49)をスライドさせるしかなかったんです」

 矢野は、2003年の星野仙一監督、05年の岡田監督の下で、正捕手として2度のリーグ優勝を経験した。虎党にとっては、“猛虎の要”でおなじみだ。

「“グラウンド上の監督”と言われる捕手は、扇の要に位置し、ただ一人グラウンド全体を見ている。選手を見る目、試合を見る目が養われ、監督向きとされています。矢野さんも、今季の阪神2軍を12年ぶりにファーム日本一に導いた。2軍の主目的は育成とはいえ、期待は持てます」

 阪神の捕手出身監督といえば、“野村克也”という失敗例を連想するが、

「そのノムさんは“外野手出身に名監督はいない”と言いますね。たしかに、元外野手の金本さんがエース藤浪晋太郎を潰した際も、“やはり外野手は投手という人種をわかっていないのか”と囁かれました」

 金本氏は辞任時の会見で“そろそろ補強で勝たれた方がよろしいと思います”と言い記者を笑わせたが、

「今季5勝の藤浪が復活して15勝したら、10勝投手を補強したのと同じです」

 矢野新監督の最初の課題といえそうだ。

週刊新潮 2018年10月25日号掲載

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