「いきなり!ステーキ」は戦々恐々? 「牛角」創業者が“1人焼肉専門店”で殴り込み

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低い出店ハードルも追い風

 千葉氏の見解では、「いきなり!ステーキ」だけでなく、「吉野家」(東京都中央区)や「松屋」(松屋フーズ/東京都武蔵野市)、既存のラーメン、パスタ専門店やファストフードの顧客を振り向かせる力があるのではという。

「『焼肉ライク』は『牛角』のノウハウを応用して精肉業者がカットし、調理したもの仕入れています。キッチンのスペースや作業も省力化され、坪効率や作業効率も良い。新橋のお店では、中国人を始めアジア系のお客様も多く、従業員も英語が堪能で、インバウンドにもきちんと対応しています、私の取材では、焼肉ライクは今後5年間で国内300店舗の出店を目指し、インドネシアを皮切りに海外にも積極進出するそうです。」(同・千葉氏)

 今の日本経済はデータ上では好景気になるそうだが、我々の財布は相変わらずデフレモードであることは言うまでもない。一方で外食産業は、人件費などランニングコストの上昇から、値上げ圧力が高まっている。

 だが低価格均一の焼鳥で人気の「鳥貴族」(大阪市浪速区)が17年10月に一律280円の商品を298円に値上げして以来、客数が前年を割り込む傾向が見られ、今年6月の既存店売上高が前年比9%減ったと発表した。

「外食業界で苦渋の値上げが相次ぐ中、『焼肉ライク』はみんなが大好きな焼肉を、1人でお手頃な価格で食べられるという形で登場し、消費者に大きなインパクトを与えることに成功しています。焼肉ライクは実にタイムリーな登場と言えるでしょう」(同・千葉氏)

 もともと小規模の焼肉店では、1人焼肉に注力していたところもあった。例えば東京・恵比寿の「焼肉おおにし」は1人焼肉の“メッカ”とも形容される人気店だ。高田馬場に支店をオープンさせるなど伸長著しい。1人焼肉に詳しい関係者が解説する。

「大阪では焼肉店にカウンターが設置されているところもあり、古くから1人焼肉の文化がありました。『焼肉おおにし』は、大阪のカウンター焼肉を東京に“輸出”することでヒットしたわけです。和牛、赤味、ホルモン、希少部位、刺身など、品揃えは豊富。全て80グラムで、ハツやセンマイなら600円ですが、赤身肉は1300円以上です。シャトーブリアン3500円というメニューもあります。要するに低価格帯の店ではありません。『焼肉ライク』は、こうした小規模店舗の動向も参考にし、チェーン店のスケールメリットを最大限に活用しようと考えたのかもしれません」

 興味深いことに、「焼肉おおにし」が支店を作った高田馬場では、「トノサマカルビ」という、同じ1人焼肉の専門店が営業中だ。「熟成カルビ定食」が690〜1400円で6種類用意されるなど、「焼肉ライク」に非常に似たメニュー構成となっている。

「運営会社・スターティングオーバーの住所は、『吉野家』の持ち株会社である吉野家ホールディングスと同じです。吉野家グループの事業会社と見るのが自然でしょう。スターティングオーバーの公式サイトを見ると、他に親子丼や唐揚げなどのチェーン店も経営しています」(外食業界ウォッチャー)

 近年、一気に注目を集めている1人焼肉。来年はチェーン店も個人店も更にバラエティを増し、斯界の覇権をかけてしのぎを削っているかもしれない。

2018年10月2日掲載

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