赤鉢巻のスーパーボランティア「尾畠さん」 肉体美を作った食生活を明かす

国内 社会

  • ブックマーク

Advertisement

 大分県在住の尾畠(おばた)春夫さん(78)は鮮魚店を営むかたわら、長年地元の登山道の整備などを続けてきた。店を畳んだ後は、本格的にボランティア一筋の生活に入ったという。

 それにしても、78歳といえばいわゆる「後期高齢者」である。他人を助けるどころか、日常生活で介護を必要としている同年代も多いはず。壮健な肉体を維持するには、なにか秘訣があるのだろうか。

「私はおいしいものは食べません。身体に良いものを食べるんです」

 そう語る尾畠さんの自宅には「医は食に 食は農に 農は自然に学べ」と書いた紙が貼られている。

「小学5年生から農家へ奉公に出されていました。私は穴のあいた野菜、つまり虫が食ったものしか食べない。スーパーの野菜は農薬を使ってるから買いません」

 そんなわけで、家の裏庭に自生しているサトイモやツルムラサキ、ニガウリなどを食しているという。また、中学卒業の翌日から65歳の誕生日まで魚屋で働き続けた尾畠さんに、好きな魚を問うと、

「キビナゴとかイカナゴみたいな、骨の多い小魚。なぜなら頭から尻尾の先まで食べられるから。要するに全体食なんです」

 キビナゴはDHA、EPAが豊富で血液をサラサラにし、認知能力を高める効果があると言われる食材。

 全体食へのこだわりは魚に限らない。自宅でも被災地でも主食は米だが、ご飯のお供に欠かさないのが梅干し。果肉を食べた後には種を割り、その中身もきちんと頂くのが尾畠流だ。

 1日2箱吸っていたタバコは、店を閉める際にきっぱり止めた。浴びるほど飲んでいたという酒も、7年5カ月前から絶っているんだとか。そのお陰か、最大時68キロあった体重も57キロに。ちなみに身長は161センチ。ところで、なぜ7年5カ月前?

「2011年3月11日、何が起きたか覚えていますか? 被災地から仮設住宅がなくなる日まで、酒は一滴も飲みません。代わりに甘酒を飲んでます」

 甘酒も「飲む点滴」と呼ばれ、腸内フローラを改善させ免疫力をアップさせる飲み物である。

 ボランティアにかける情熱は言葉だけのものではない。山口で行方不明児を捜し当てた後、大分の自宅に滞在したのはわずか2日間。その後は再び、豪雨災害に見舞われた広島県呉市へと向かったのだった。気になるのは彼の普段の生活だが、

「普段は何をしているかって? ボランティアです」

 上の写真は、貴重な“ボランティアをしていない”時の姿を自宅で再現してくれたもの。

「こうやってテレビを見て、困ってる人がいたら出かけます。子供が行方不明になったことも、ニュースで知ったんです」

 雨ニモマケズ、風ニモマケズ、すべてはボランティアのためなのだ。寝っ転がってテレビを見るその姿が、ありがたい仏像のように見えてくるのは気のせいだろうか。

週刊新潮 2018年8月30日号掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。