大阪地震は前触れ?「南海トラフ」なら“死者32万人”“被害額1410兆円”

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 これから30年以内に必ず起きると予想されているのが、他ならぬ「南海トラフ巨大地震」である。

 そして、今回の大阪で起きた地震は、この巨大地震の前触れだと指摘する声が少なくない。南海トラフ地震が発生した際――。政府は人的被害に関して最大で死者32万人、建物等に関する資産の被害額は170兆円と試算する。しかし、今月7日に土木学会が弾き出したばかりの数字はもっと衝撃的だ。地震と津波によって被る経済的な損失は20年の長期に亘り、その額は1410兆円を下らないという。一桁違うのだ。

 駿河湾から九州東方沖にかけて700キロに及ぶ海底の溝「南海トラフ」。海洋プレートが大陸プレートにぶつかり沈みこむ箇所で、巨大地震の震源域が3つあるとされている。それぞれ東海、東南海、南海の各地震に対応している。最悪の場合、この3つが同時発生する連動型地震、すなわち南海トラフ巨大地震が待ち構えているというわけだ。

 元京都大学総長の尾池和夫氏によると、

「今回の地震については3つの可能性が考えられます。1つめは1995年に起きた兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)の余震の1つであるというもの。2つめは、震源が上町断層帯の北部であることから、上町断層帯が大規模地震を本格的に起こす前兆現象だというもの。この場合は、数十年から100年先にかけて、M7クラスの直下型地震が大阪で発生する可能性がある。そして3番めが有馬・高槻断層帯の活動だというもので、同じように中規模の地震が起き得ます」

 以上、3つの可能性に加え、南海トラフ地震の前兆活動だと尾池氏は指摘する。

「関西全体はこの数十年、地震の活動期に入っています。私の研究によると、それを経た2038年頃に南海トラフ巨大地震が起きる。今回の地震は、その活動期に起きる地震の一環と考えることもできます」

 当の土木学会に聞くと、

「1410兆円というのは決して大げさなものではありません。例えば、巨大地震が起きれば工場の操業も広範囲で停止しますし、結果、給与の支払いだって滞るところも出てくるでしょう。そもそも、長期間、被災した地域に人が住めなくなることだってあります。試算では大阪や名古屋の人々は、20年間で得られたはずの所得が平均で4分の3以下に縮小することも予想されています」

 2038年、1410兆円……。重い現実が横たわるその近未来に、今回の教訓は生かせるだろうか。

週刊新潮 2018年6月28日号掲載

特集「天災と人災に揺れた『大阪大地震』」より

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