「ゆうちょ銀行」貯金上限撤廃に“三つ巴”のカネ勘定

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口座維持手数料

 限度額が撤廃されれば、ゆうちょ銀行の経営が苦境に陥りかねない。こう指摘するのは経済ジャーナリストの福山清人氏だ。

「銀行はこれまで安い金利で預金を集め、高い金利で貸し付けて利ザヤを稼ぐか、運用に回して利益を上げてきた。一方、ゆうちょ銀行は企業への融資が規制されていて、運用力は地銀に比べても劣っている。外資などから運用担当者を引き抜いているが、十分な成果をあげているとは言い難いでしょう」

 さらに、銀行が本格的に導入検討を始めた“口座維持手数料”も、ゆうちょ銀行を苦しめそうだという。

「口座維持手数料は残高に応じて、手数料を徴収する制度。例えば、残高が50万円未満なら月額2000円を徴収する。つまり、カネ持ち優遇です。ゆうちょ銀行は、誰にでも平等に接する“ユニバーサルサービス”を標榜している。それを考えれば、口座維持手数料の導入に踏み切れるはずがなく、利息負担だけが重くのしかかることになります」(同)

 それなのに“親会社”の長門社長が撤廃を要望したのはなぜか。全国紙の経済部デスクの解説では、

「本音では、ゆうちょ銀行のみならず日本郵政も消極的なのです。限度額撤廃を要望したのは、大株主の意向を“忖度”した結果に過ぎません」

 日本郵政の大株主とは、発行済み株式の56・87%以上を所有する政府に他ならない。

「政府は日銀などに株式を買わせて、株価を引き上げています。いわゆる“5頭のクジラ”で、ゆうちょ銀行もその一つ。日銀の株式購入資金が底を突きそうなので、政府はゆうちょ銀行に集まる新たな資金で株式を買わせようと目論んでいるフシがあります」(同)

 株価が暴落してゆうちょ銀行に万が一のことが起きたら……。その時、救済に使われるのは我々の税金に他ならない。

週刊新潮 2018年3月29日号掲載

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