志願者急増の「医学部」 その学費、将来性についての最新研究

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最大の敵は苦手科目

 いずれにせよ、医学部受験は“情報戦”だと、予備校関係者も口を揃える。地方の医学部の話が出たが、

「最近は旧帝大以外の国公立大医学部で、地元出身者の入学を優先し、外部の一般入試枠を狭めることが多くなりました」

 と、駿台教育研究所進学情報事業部の石原賢一部長はいう。

「たとえば、首都圏の国公立大医学部は難易度が高いので、学力がおよばない受験生は福島県立医大や弘前大に流れていましたが、地元優先枠ができ、それが叶わなくなってしまった。道立の札幌医科大など、外部枠はたった20名ほど。逆にいえば、AO入試や推薦入試を利用すれば、地方の学生が地元の国公立大医学部に合格する難易度は、かなり低くなります」

 また石原氏は、最近の医学部受験に求められるものとして、コミュニケーション能力を挙げる。

「今年から東大理三が面接を復活させました。京大も以前は面接を点数化していましたが、いまは筆記試験と切り離してオールオアナッシングで判定しています。面接を点数化すると、コミュニケーション能力に欠けても、超人的な数学や理科の能力でカバーして入学できてしまうからです。また、地方の国公立大医学部の面接では、 地元の地理や経済、特産品や医療問題について聞かれることもあり、要注意です。たとえば福島県立医大で、福島県の主要都市を人口が多い順に答えなさい、という質問がなされたことがあります。地元愛をアピールするくらいの知識が問われているわけです」

 だが、その前に、筆記試験で点数をとらなければ始まらない。河合塾の梅田氏によれば、

「河合塾調べでは、昨年の入試で国公立大医学部合格者のセンター試験の平均点は、900点満点で791点。得点率88%です。東大と京大の医系を除く理系合格者の平均800点とほとんど差がない。つまり、不得意科目があると受かりにくいのです。医学部以外の入試では、得意な科目があれば苦手科目の失点をカバーしやすいのですが、医学部は1科目でも大きな失敗をすると、その後の配点を組み立てられなくなってしまいます」

 だから、医学部入試には“穴場”が少ないのだが、

「あえて指摘するなら隔年現象です。その年の倍率が高い大学は翌年下がる傾向があります。加えてマークすべきは、入試システムが変わった大学です。たとえば、鳥取大医学部は今春から二次試験の科目を増やし、浜松医科大はセンター試験の結果による第一段階選抜を実施。実際、その結果、志願倍率は5・6倍から3・3倍に下がりました。このような変更は、受験生の志願動向に大きな影響を与えるので、最新情報を収集することも重要です」(同)

 最後に、将来の受験生を抱える親や祖父母へ、石原氏がアドバイスする。

「医学部志望者に大切なのは、中学や高校の低学年時に苦手科目を作らないことです。医学部受験は合格者と不合格者の点差が小さく、ほんの少しのミスが命取りになる。ただ、一般論で言うと、女子は早熟で、男子は終盤の伸びが強い。駿台は中2からハイレベル模試を実施していますが、 中2、中3では、成績上位がほとんど女子校の生徒さんです。男子は成績が多少良くなくとも、とにかく苦手科目を作らないこと。そのうえで、一つでも得意科目があれば最高です」

 その備えこそが、医学部選びに際しても、最大の力になるということだ。

週刊新潮 2018年3月15日号掲載

特集「志願者急増という『医学部』の『人気』『学費』『将来性』の最新研究」より

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