ボンカレー50周年「知名度90%超」CMのないロングセラー商品の意外な悩み

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最初は返品も少なくなかった

 ボンカレーの最大の特徴は、世界初の市販用「レトルトパウチ食品」だという点だ。「レトルト=加圧加熱殺菌」した食品を、「パウチ=気密性及び遮光性を有する容器で密封」したという意味だ。

 どんな材料でパウチを作るか、どうやってレトルト釜を設計するか、まさにゼロからスタートした。まずは大塚グループが持つ点滴液の殺菌技術を応用したが、パウチの耐熱性、強度、カレーの殺菌条件などはテストを繰り返し、地道に割り出していった。

 そして68年2月12日、阪神地区限定でボンカレーの発売がスタートする。「ボン」はフランス語の「bon」が由来。「良い」とか「美味しい」という意味だ。味は有名レストランや専門店のカレーも参考にしたが、最終的には「お母さんが家で作るカレー」を基本に置いた。

「当時のパウチは半透明で、光と酸素を完全に遮断できませんでした。賞味期限は冬場で3カ月、夏場で2カ月。それでも当時の保存期間としては、かなりの長期間だったんです。しかし、見たことも聞いたこともないものを食べるというのは相当な勇気が必要でしょう。最初の売上は厳しく、賞味期限が迫って返品されることも珍しくなかったそうです」(大塚食品・広報室)

 そのため、まずはパウチの改良に挑んだ。光と酸素を遮断するアルミパウチを完成させ、賞味期限を2年に延ばす。こうして69年5月に全国発売を開始するが、次の課題は「どうやって売るか」だった。

「『レトルト食品なので保存料を全く使っていません』と売り込んでも、『嘘だ。防腐剤が山のように入っているんだろう』と信じてもらえない。今より高価だった牛肉をしっかり使っているので、小売価格も、比較的、高額でした。大阪で素うどんが50円から60円の時代に、ボンカレーは80円だったという記録が残っています。全国販売に踏み切っても、出足は鈍かったようです」(同・広報室)

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