「めちゃイケ」後番組も「世界もの」 テレビに「世界」番組が急増するワケ

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 1996年10月から21年半続いた「めちゃ×2イケてるッ!」(フジテレビ系 土曜20時~)が、ついに今年3月で終了する。「めちゃイケ」の後番組は、1月19日に特番として放送された「世界!極タウンに住んでみる」に決まりそうだという。同番組は、世界各国の極端な街“極タウン”にディレクターが潜入するというもの。
 ちなみに、同じくフジテレビの一昨年終了した「SMAP×SMAP」(月曜22時~)の後枠では、現在「世界の村のどエライさん」という、世界各国の過酷な自然条件や不便な立地ながらも幸せに暮らす村人と、その村人たちのために働く人「どエライさん」に密着するという番組を放送中。これだけでなく近年「世界」を扱った番組がどんどんと増殖しているのである。なぜこれほどまでに「世界」番組が増えているのが。経営コンサルタントの佐藤智恵さんは著書『テレビの秘密』で、「自分の人生を肯定するために見ている」と分析する。(以下、同書より抜粋)

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大増殖! 「世界系」番組が急増するワケ

 いわゆる「世界」ものは、主に次の6つの要素で成り立っています(スタジオトーク部分は除く)。

(1)海外の事件・ニュース
(2)日本人取材
(3)秘境や僻地
(4)冒険
(5)美しい風景映像
(6)クイズ

 たとえば、「世界まる見え!テレビ特捜部」「ザ!世界仰天ニュース」は主に(1)、「世界の村で発見!こんなところに日本人」「世界ナゼそこに?日本人」は(2)と(3)、「世界の果てまでイッテQ!」は主に(4)、「世界の車窓から」「シリーズ世界遺産100」は主に(5)。「世界ふしぎ発見!」は主に(6)。

 中でもここ2~3年で特に急増してきたのが「世界×日本人」の組み合わせ。各局、特番が好評を博し、次々とレギュラー番組化されました。

なぜ急増?

 それにしても、なぜ「世界(辺境)×日本人」番組がここ数年、急増したのでしょうか? それは、やはり安く制作できて、固く視聴率を取れるから。つまりバラエティ番組の中でも、このフォーマットは、コストパフォーマンスがいいのです。

 かつては海外取材番組は莫大な費用がかかり、元が取れないと言われていましたが、現在は比較的安く制作することができます。カメラや機材が小型化されたこともあり、アジア取材であれば国内よりも安価な場合もあるぐらいです。日本人取材であれば、リポートするタレントさんも1人いれば十分。出演料もおさえられます。
 そのうえ、世界に貢献する日本人を紹介する番組は、日本人のグローバル化を支援しているようで、スポンサーにとっても好印象です。

 視聴率を取れる理由は、2つあると思います。
 まず1つ目は、日本国内で「教養程度にはグローバル化とは何かを知っておきたい」、という視聴者が増えていること。2012年に第2次安倍政権が発足して以来、成長戦略の中心にあるのは、人と企業の“グローバル化”。ところが、急にグローバル化といわれても、多くの視聴者にとってはピンときません。
 特に地方都市に住んでいれば、日常生活で英語を使うこともなければ、外国の企業と仕事をするわけでもないでしょう。家から半径数キロメートル以内で仕事もプライベートも完結するという人もいます。たまに海外旅行に行くことはあっても、グローバル化とは無縁の生活を送っている視聴者は多いのではないでしょうか。
 でも、そこは勉強熱心で教養豊かな日本人。グローバル化した日本人とはどういう人たちなのかを見ておきたいし、海外旅行では行けないような辺境の国々も見ておきたいのです。だから「世界」番組に自然とチャンネルを合わせてしまう。

 2つ目は、「ずっと日本で生きてきてよかった」と確認するため。前出のテレビ番組で取り上げられた日本人の方々の人生は波瀾万丈。現地の経済成長に貢献していたり、寄付をしていたり、本当に立派な方々ばかりです。
 こういう日本人を見ると、「日本人はすばらしい」と誇りに思います。しかし、同時に「自分にはこんな大変な生活は無理だ。日本は最高だ」とあらためて感じている視聴者もいるのではないでしょうか。つまり、日本で生きてきた自分の人生を肯定するために見ているのです。

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「世界の果てまでイッテQ!」(日本テレビ系)や「陸海空 地球征服するなんて」(テレビ朝日系)など、確かに「世界」番組の人気は高い。しかし、今年1月にスタートしたばかりの「世界の村のどエライさん」は既に視聴率が1ケタ台と大苦戦中。はたして「世界!極タウンに住んでみる」は人気を勝ち取ることが出来るのだろうか。

デイリー新潮編集部

2018年2月3日掲載

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