子供が学ぶべきは「英会話」「プログラミング」より「ピアノ」!? その驚きの効果とは

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2018年01月05日

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開成では全員がピアノを弾く

 実は東大合格者数で首位を独走する超進学校・開成では全員がピアノを習っていると、前出・菅野さんが教えてくれた。

「幼児期に音楽を学ぶことが知能を発達させるうえで有効であることは間違いないと思いますが、音楽教育の可能性はそれだけではありません。たとえば開成では、もう四半世紀以上も前から、全員にピアノを弾かせているんです」

 音楽室には1人1台電子ピアノが用意されている。中1の1学期、校歌の楽譜を書き写すなどして、音楽の基礎を学ぶと、1学期中に「河は呼んでいる」、2学期には「ドナドナ」、3学期にはジブリの「君をのせて」に自分で伴奏を付けて弾く(菅野さん取材時)。

 中2の1学期には創作の第一歩としてバッハのメヌエットを全員必修で学ぶ。2学期になるとなんと自分で曲を作り、それを演奏するのが期末テストとなる。

 さすがは開成生。進度が速いのは数学や英語だけではなかった。音楽でも、たった2年間でオリジナル曲を作曲し、自ら演奏できるようになってしまうのだ。中3時にはギターも習う。

 高校では、音楽は選択科目となる。藝大でも使われているテキストを使用し、1年間をかけて作曲を学ぶ。最後の授業のテーマは「自由と規則、あるいはドビュッシー」だ。自由とは最初から何をしてもいいということではなく、ルールや伝統を学んで完全に身に付けたうえで初めて手に入るもの。それが人間の生き方そのものだという思いが込められているという。「守破離」の精神である。

 ピアノを習う意味は、幼児期に知能を発達させるためだけではない。全人教育あるいはエリート教育としての意味合いもあるのだ。

プログラミングよりピアノ!?

 菅野さんはさらに、特にアメリカのトップ大学において、次世代のリーダーたちがリベラル・アーツ教育の一環として音楽を学んでいる姿を丹念に調べ、すでにその成果を著書『ハーバード大学は「音楽」で人を育てる』にまとめている。

「ハーバード大学では、イノベーティブな音楽に触れることで、革新性や創造性について学ぶ授業が行われています。カリフォルニア大学バークレー校には、民族音楽を通してダイバーシティについて体験的に学ぶプログラムがあります。マサチューセッツ工科大学では、世界で起きていることを音楽に表し、音楽を通じて理解するという取り組みを行っていました」

 アメリカの多くの総合大学では、音楽学科や付属の音楽学校が存在するだけでなく、音楽専攻ではない学生でも受講できる音楽科目が幅広く開講されている。

「音楽は古代ギリシャの時代からリベラル・アーツの一部として認められてきました。21世紀の今、アメリカのトップ層の学生たちは教養として音楽を学んでいます。豊かな人格形成や人間理解、そして真理を学ぶ目的で、音楽の重要性が見直されているのです」

 21世紀の子供たちが学ぶべきは、英会話よりもプログラミングよりも、まずはピアノかも知れない。

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おおたとしまさ
育児・教育ジャーナリスト。1973年東京生まれ。麻布中高卒、東京外国語大中退、上智大卒。リクルートから独立後、教育誌等のデスクや監修を歴任。中高教員免許を持ち、私立小での教員経験もある。『ルポ塾歴社会』など著書多数。

週刊新潮 2017年12月7日号掲載

特別読物「なぜ『東大合格生』の2人に1人はピアノレッスン経験者なのか――おおたとしまさ(育児・教育ジャーナリスト)」より

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