誕生から50年「リカちゃん人形」秘史 日本人向け5頭身、“幻の姉”の存在も

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衰えない人気のワケ

 おもちゃはいつも時代を反映している。ファッションだけでなく、設定や生活様式、登場人物まで変化しているのは興味深い。特に日本が誇るリカちゃんは日本社会を濃密に反映させた長い長い物語なのだ。

 応接間だけだったリカちゃんハウスが、マンションになり、億ションとなったのも、実社会での憧れをママゴトで叶えてあげようという作り手の想いに他ならない。

 僕が知る実在のリカちゃんやリカさんたちは、リカちゃん人形のように皆から愛される子になって欲しいという親心から名付けられたという人が実に多い。それほどまでに国民に愛される人形だということである。

 現在、リカちゃんの国内唯一の生産工場があるのは、福島県小野町という人口1万人の小さな町だ。リカちゃんキャッスルというミュージアムがあって、小野町最大の観光拠点でもある。年間10万人もの来場者数を誇るが、東日本大震災後は風評被害により4万人に減ったといわれる。だが、その風評被害も誕生50周年で吹き飛ばし、現在は元に戻ったというのも、人気のすごさ。さらにこの小野町は、日本が誇る美女・小野小町の出身地といわれている。日本一の美女の生地と、日本一の美少女人形の生産地が同じというのもなにかの因縁だろうか。

 リカちゃんの人気が半世紀に亘り衰えないのは、子供相手でも手を抜かない作り手のこだわり、技、そして何より心がこもっているからだ。リカちゃん始めお友達や家族の人形そのものはもちろん、服の縫製、ハウスや小物、ストーリーや設定まで実にきめ細かなのである。それらが子供たちに伝わっているからこそ、50周年を迎えられたのだ。これからも子供から大人まで皆に愛され続ける人形であって欲しい。

北原照久(きたはら・てるひさ)
1948年東京生まれ。大学時代にスキー留学したヨーロッパで、ものを大切にする文化に触れ、古い時計や生活骨董、ポスター等の収集を開始。現在はブリキのおもちゃコレクションの第一人者として世界的に知られる。

週刊新潮 2017年9月21日号掲載

特別読物「誕生から50年! 進化を続ける『リカちゃん人形』秘史――北原照久(玩具コレクター)」より

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