この世界に暮らすすべての人の力に 生きることに寄り添った「コウノドリ」最終回

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夢みたいなこと

 最終回でペルソナチームが一丸となって支えたのは、小松の同期である助産師、武田京子(須藤理彩)の出産であった。第7話でみずからの子宮を全摘出し、子どもを持てなくなった小松が、出血が止まらず心拍の停止した武田に向かって「生きろ!」と叫んだ時、そして救命科の加瀬宏(平山祐介)、下屋加江(松岡茉優)の尽力の甲斐あって武田の心拍が再開した時、心から私は安堵した。

「コウノドリ」放映中、街行く子連れの母、保護者会のためか校門に集まる母たちの顔などを見ては、全員が「出産」という出来事を乗り越えたのだという事実に私はあらためて思いを馳せていた。人生の数だけ、あらゆる性別の人に試練と選択があることを感じながら、これからも生きてゆきたい。

 他大学での小児循環器科への異動が決まった白川領(坂口健太郎)の穴を埋めるように、新井恵美(山口紗弥加)がペルソナに戻ってきた。また、四宮は父の死後の能登の産科医療を担うため、ペルソナを辞めることを決断した。

 白川と下屋、サクラと四宮、それぞれの旅立ちによる別離のタイミングは異なっても、同じ学び舎で育ち、切磋琢磨しあってきた同期たちの絆はこれからも形を変えながら続いていくに違いない。そして、セカンドシーズンいちばんの成長を見せてくれた研修医・赤西吾郎(宮沢氷魚)が産科医になることを選んだことも、喜びたい。

 四宮が最後にサクラに向けた「夢みたいなことを言うやつがいないと先には進めないからな」という言葉は、所詮、綺麗事でしかないと受け止められるかもしれない。しかし、医療や福祉、芸術などあらゆる世界で道無き道を切り開いてきたのは、いつだって「夢みたいなこと」を言ってきた人々なのだ。人生のいちばん最初の舞台になる出産という場所に、サクラや四宮たちのような医師たちが、これからも寄り添い続けてくれる未来を信じて、今作のレビューを終わりにしようと思う。

西野由季子(にしの・ゆきこ)(Twitter:@nishino_yukiko) フリーランサー。東京生まれ。ITエンジニア10年、ライター3年、再びITエンジニアを経て、永遠の流れ者。実は現代演劇に詳しい。

2017年12月28日掲載

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