週刊文春「韓国軍に慰安婦」記事は山口敬之の捏造か【検証1】

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「山口記事」の概略

 本記事の要旨は、安倍外交の援護射撃たるべく放たれた「山口記事」において、公文書を歪曲し、取材相手のコメントを捏造した疑惑が持ち上がっているということだ。そして、山口氏からのレイプ被害を訴えてきた伊藤詩織さん(28)が、警視庁刑事部長による逮捕状の差し止めなど、社会が包摂するブラックボックスに斬りこんだと謳う『Black Box』(文藝春秋)を本名で上梓したことと無縁ではない。その関連については、後章に譲る。

 まず、山口記事の紹介から始めよう。全体7ページのうち彼の寄稿分は5ページ半。残りは編集部のベトナム現地取材によるもの。

 記事は、山口氏自身が見つけた公文書が、韓国軍にベトナム人慰安婦がいたと断定しており、裏付けの補強取材の対象となった人々もインタビューでそれを証言している――そんな内容である。

 もう少し詳しく見てみると、概略は以下の通りである。

(1)韓国では植民地時代に日本に協力した者を糾弾する法律が成立している。日本軍(編集部註:正しくは満州国軍)の将校だった朴正熙元大統領を父に持つがゆえに、朴槿恵大統領はその親日イメージに苦しめられてきた。

(2)「ある外交関係者」が山口氏にこう告げる。「日本批判を続ける事が朴大統領のレゾンデートルとなって、慰安婦問題が彼女自らの反日姿勢を証明するツールとなった」
「ベトナム戦争当時、韓国軍が南ベトナム各地で慰安所を経営していたという未確認の情報がある。これをアメリカ政府の資料等によって裏付ける事ができれば、慰安婦問題において韓国に『加害者』の側面が加わる事になる」

(3)全米各地に眠る公文書から、「韓国兵専用の慰安所がある」と米軍当局が断定する文書を発見する。

(4)証言者のインタビューによって裏付けを得て、韓国の方こそ歴史を直視すべきだと山口記者は訴える。

 山口氏は(3)で発見した瞬間をこう記述している。

〈7月25日深夜。誰もいない支局の小部屋で、いつものように犯罪記録の公文書を一枚一枚剥ぐように読み込んでいると、一通の書簡に行き当たった〉

 彼の眼前に現れたのは、〈サイゴン(現ホーチミン市)の米軍司令部から韓国軍ベトナム指揮官に送られた〉文書で、米軍需物資の横流しに韓国兵が関与していることを指摘していた。米軍などが捜査を行なって、その結果を、次のように記していた。

〈「この施設は、韓国軍による、韓国兵専用の慰安所(Welfare Center)である」
驚いて何度も読み返したが、米軍司令部がこの施設を「韓国軍の韓国兵のための慰安所」であると捜査に基づいてそう断定している〉

 一見、理路整然とし、綻びがないように映る原稿にはその実、嘘や勘違い、そして捏造が絡み合っている。ではここからは具体的な証言を基に、それを解きほぐしていくことにしたい。

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