日経に大広告「13人の元国税マン」はオーナー企業の用心棒?

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 そのコワモテ風の顔ぶれに、ぎょっとした読者もいたに違いない。8月28日の日経新聞の全面を飾った広告には、13人の元国税マンが並び、こう書いてある。〈オーナー社長から税金のストレスを解放します〉。これって、国税局対策のための「13人の用心棒」ってこと?

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 何はともあれ〈税務総合戦略室〉と銘打たれた広告に並ぶ元国税マンの肩書がすごいのである。

「国税局査察部」、「国税局調査第一部国際情報課」、「国税不服審判所部長審判官」等々、泣く子も黙る面々ばかり。新聞でセミナー参加者を募っているのだが、月1回のペースで広告を出していると言うから、年間で数千万円は下らない。それだけ、泣きついてくる依頼者が後を絶たないのだろう。広告によると、

〈切羽詰ったケースではすでに税務調査が始まっており、その過程において税務署から想定していなかった多くの指摘事項が提示され、困り果ててSOSをいただくといったケースも珍しくありません〉

〈私達はそのような事態が発生しないよう、お客様とともに将来を見据え、中長期的な視点を持って税務対策を考えていきたいと思います〉

 思い出してしまうのは、芸能プロなどの脱税指南役として暗躍し、2002年に脱税で捕まった元札幌国税局長の事件だが、国税担当記者が言うのだ。

「ここは以前〈国税組織の“表と裏”〉、〈税務調査における質問検査権〉といった刺激的な内容のセミナーもやっており、国税庁の中には苦々しく感じている人もいます」

 司直の世界では検察にニラミをきかせ、摘発される側の“用心棒”に回った「ヤメ検」もいるが、やっぱり元国税マンだけに、期待されるのは同じことなのか。

「100%ない」

〈税務総合戦略室〉を運営しているのは、東京・中野区にある「エヌエムシイ税理士法人」。グループ企業には会計ソフトを販売する会社もあり、50人近いスタッフを擁する税理士業界の大手だ。

「これだけOBを集めているので、うちに頼めば国税局に手心を加えてもらえるのではと聞かれることがあります。でも、それは100%ありません」

 そう話すのは同法人の代表社員・佐藤修一氏だ。

「うちの顧客はオーナー社長です。彼らは会社の法人税もあれば自分の所得税もある。さらには、子供への事業継承など相続の問題も抱えている。〈税務総合戦略室〉は、そうした人たちの相談に乗るのが仕事。そこで、7年前から、法人税が得意だったり、相続税・資産税のエキスパート、所得税に詳しい人など国税局出身者を一人一人採用していたら、13人の陣容になったというわけです」

 で、相談の内容だが、

「OBの人たちは普通の税理士とは視点が違う。国税局がどういうふうに会社の帳簿を見るのか心得ており、指摘されたことが、税法に沿ったものかどうかをアドバイスできるのです」

 顧問先は約130社というから、やっぱり国税には国税OBが効くのである。

週刊新潮 2017年9月21日菊咲月増大号掲載

ワイド特集「一葉落ちて天下の秋を知らず」より

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