母は十年かけて少しずつ死んでいった。体中の機能が失われていき、やがて口を動かす機能が失われた。口が動かなければ食べられない。ある日、母のからだに直接栄養剤を送り込むための胃瘻の手術をし、その帰りがけに、中華料理屋で母のいない食卓を囲んだ。母が二度と食べることのなかった、あの餃子の味を、私は忘れることができないだろう。
あれは生きながら母を弔う通夜だった。母が少しずつ死に向かう間、私は突き動かされるようにして、濃厚に死の匂いのする現場に入り、『エンジェルフライト』で国際霊柩を、『紙つなげ!』で被災者の再生を描いた。...
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パンチの効いた爺さん婆さんばかりで元気をもらえるドラマ「やすらぎの郷」(TVふうーん録)
テレ朝のシルバータイムドラマが熱い。脚本家・倉本聰の渾身の一撃「やすらぎの郷」に、真っ昼間から心躍らされているからだ。
都合のいいように使い倒すテレビ局や代理店に真っ向から喧嘩を売り、芸能大手事務所の横暴と支配に触れ、芸能界の悪しき慣習(枕営業)も暴く。すべて脚本に乗せ、役者陣の口から吐き出させる。まさに倉本砲。
喫煙に不寛容な現代社会への反抗も盛り込むし、介護疲弊を口にできない空気感(閉塞感)にも物申す。太陽光、風力に人糞を使った自然エネルギーによる発電をアピールするし、今後はきっと政権批判も展開するに違いないと思わせる。...
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